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肉体的ブラクラ

sojoo.jpg



こんにちは少女だよ。脚本が後一歩の詰めで難航していて、〆切もあと60時間を切って、色を失っていますが一応元気です。

しかし集中力が散漫になっているのか、不注意で刷毛を一本だめにしてしまった。なんということだ。普段、画材から愛を引き出すために物は大切にと心がけていたのに。丁度昨日、気晴らしにと思って動画を見ていて、うっかり「愛と勇気とかしわもち」を見てしまい、暗黒の気分になっていたのだが、刷毛の無駄死にという形でシンクロしてしまった気がする。「愛と勇気とかしわもち」はフリーゲームで、探せばプレイ動画など出てくるが、できれば見ずに避けて通る人生をおすすめしておきたい。少女的には。




イデアに近づいていってる。
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娑羅双樹の花の色 

syoujoda.jpg


こんにちは少女です。すっかり退色しましたが私は元気です。今日は油絵具としての茜染料についての性質と歴史的地位、そしてその盛者必衰の理と国内国外での認識差とかいう非常に誰得な話を書こうと思います。


油絵具の製品の色名を、顔料の面から見るといくつかのパターンがある。
1、顔料の名前として完全に定着しているもの(ウルトラマリン、ビリジャンなど)。

2、直感的だが、正確には顔料を表さないもの(カドミウムグリーンなど。カドミウムで緑は作れないので、カドミウム黄にフタロシアニン緑などを足して作られている、混色なのである)。

3、通称の色名。バンダイクブラウンやサップグリーンのようなもの。何が入っているか想像しづらい。

4、各メーカーが自分たちで開発し、名付けたもの。


まあ乱暴にこう分けられるとする。上のものほど内容がはっきりしており、下ほど何が入ってるのか分かりづらい。一応絵具のチューブにはどういった顔料が使われているかが記載されているのだが、カラーインデックスの番号だけの場合も多い。記載義務はあるけど読ませる気がない的な。
ということはつまり、まあ気にしなくてもそれほど支障はないということで、これらが分からないことが直接使用上で事故になることはない。しかし、商品を選ぶときは誰しも色見本と名を見て参照する。そしてできれば、ある程度の性質を見て取りたい。

(画材屋では、チューブを開けて中身を見る客が存在する。これをやると色見本よりも多く情報を得られるが、当然迷惑行為なのでやってはいけない)


さて、店頭でさまざまな色やメーカーの差をよく調べてみたところ、とくに赤の透明色(茜色)が、メーカーごとにバラバラな名前を付けており、内容も物によって違うことを観察した。ただでさえこのあたりの色は、マダー、クリムソン、アリザリン、カーマインなどと名前が多く混乱しやすいのに。


赤の透明色は、「ローズマダー」「クリムソンレーキ」の名前でよく知られている。油絵具セットを買うとかならず含まれており、油絵に触れたことのある人なら目にしているはずの基本色である。チューブから出したままだと黒ずんだ赤だが、伸ばすとバラ色に開く。
朱の上に薄く何層も重ねて塗ると目が醒めるめるような鮮やかで深い赤を作ることができ、また明るい地の上では華やかな色を差せるので、赤い衣や顔の頬紅などによく使われた。

これほどメジャーで使いよい(=基本色)は名前が定まっているのが普通だが、なぜメーカーごとに名前や内容が違うのか。

結論から言うと、茜を使ったレーキ顔料は欠点があるので、顔料が代替されつつあり、それがメーカーごとでてんでバラバラなのである。そこに名称の混乱があるのかと思われる。


ここで用語などを解説しておく。「ローズ(赤)マダー(茜)」は色の名前である。「アリザリン」は茜の根から取れる赤色の化合物の名前で、「クリムソンレーキ」は、元々はコチニール色素を用いたレーキ顔料だったが今は色名に用いる。「カーマイン」はクリムソンと語源が同じ、アラビア語で昆虫をさす「ケルメス」から。英語「クリムソン」が成立する前にはコチニールレーキはカルミンと呼ばれていたようだ。現代ではコチニールは退色の問題があり、絵具には使われていない。

が、「クリムソン」「カーマイン」はコチニールに源があるのが味噌だ。もともと茜とは別系統の色なのである。ちなみにコチニールはカイガラムシから取れるもので、一時期ファイブミニで騒動があった、あれです。
レーキ顔料というのは、水溶性の染料を基材(透明か白色の顔料。体質と呼んだりもする)に定着させ、不溶化したもの。簡単に言うと、細かすぎる色の粉を、絵具にできるくらいにちょっと大きくまとめるような感じ(あんまりな説明だが)。今話題にしているアリザリンやコチニールは染料で、どちらもレーキ化させたものが絵具になっている。

現在、これら天然品は市場からはほぼ消えており、合成されたアリザリンレーキが使用されている。


さて、以上のことをふまえ、これから各メーカーの絵具の名と使用顔料を記していく。右が名前、左が顔料である。


クサカベ

クリムソンレーキ      アントラキノンレッド(PR177)
アリザリンクリムソン    アリザリンレーキ(PR83)
ローズマダー        アリザリンレーキ
ピンクマダー        アリザリンレーキ


コチニールの色、カルミン酸色素はアントラキノンの誘導体である。ここまで化学の話になると全く自信がないが、誘導体はウィキペディア先生によれば「ある有機化合物を母体として考えたとき、官能基の導入、酸化、還元、原子の置き換えなど、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物」とのこと。PR177はアントラキノンそのものを含む顔料なので、「クリムソン」を意識しつつ合成顔料に代替したのかな、という気がしないでもない。しかしホルベイン工業技術部編「絵具材料ハンドブック」を見ると、PR177とカルミン酸の構造式が似ている事は分かるのだが、アリザリンもアントラキノンに毛が生えたような形をしており、ちがいがわからず、絵描きの想像力の限界に直面して軽く萎えたりできる。

さて、しかしその他の商品はやや漫然とした印象を受ける。
残り三つは上ほど色が深く、下ほど明るい。しかし使用されてるのはアリザリンレーキのみである。
(同じ顔料番号でも色味は変えられる。ちなみに「PR」とは「ピグメント レッド」の略記)
上に書いたように、アリザリンレーキは代替されつつあり、悪い顔料では決してないが、しかしはっきりとした欠点も持っている。クサカベは「ミノー」という上級のシリーズもあり、それも同じくアリザリンレーキを使用している。(さらに上のシリーズ『ギルド』は調べてない)これを見る限りブリードを嫌うような人たちに対しては無策であるように見える。

マツダはアゾ系の代替品がある。

マツダ

クリムソンレーキ      アリザリンレーキ
カーマインレーキ      アゾ系
ゼラニウムレーキ      アゾ系
ディープマダー       アリザリンレーキ
ローズマダー        アリザリンレーキ
ピンクマダー        アリザリンレーキ


マツダは顔料番号が記されてないので、アゾ系が具体的に何なのか不明である。名前にレーキとあるからレーキ型だろうとも思われるが、上のクサカベの「クリムソンレーキ」、使用されてるPR177とは顔料型であるようだ。このように名が実を表さないケースがある。


ホルベイン

クリムソンレーキ     アントラキノンレッド
アリザリンクリムソン   アリザリンレーキ
ピンクマダー       PR221(ジスアゾ縮合顔料)
ローズドレー       アリザリンレーキ、PR144(ジスアゾ縮合顔料)
ローズマダー       PR221
ゼラニウムレーキ     PR188(モノアゾ)
カーマイン        PR221


日本のメーカー三社ではホルベインが代替に意欲的に見える。やはりアゾ系を中心に代えてきているようだ。
さて、同じ名前の絵具なのに、使われている顔料が統一されてないことにお気づきだろうか。というか、これらの商品名と内容の顔料の相関に、なんの秩序もないように私には思える。
別に協定があるわけでもないし、色見本さえあれば買い物にそれほど不自由しないのだが。


続いて、海外メーカー。


ルフラン(仏)

ローズマダー ヒュー     PY110(イルガジンイエロー3RLTN)、PR177
ルフランクリムソン      PV19(キナクリドン)
アリザリンカーマイン     アリザリンレーキ
アリザリンクリムソン     アリザリンレーキ
カーマインレーキ ヒュー   アントラキノンレッド
ディープマダー ヒュー    アントラキノンレッド、PV23(ジオキサン系)

ルフランは妥協のないメーカーで、真骨頂はメディウムにあるけれど、絵具も第一級なので肯定的に論じていい。
「ヒュー」というのは、似せた色という意味だ。毒性があったり高価すぎる絵具のパチ物というイメージが強いが、こういった「改良版」としても使用する。
本家の色は店頭に無かったので、アリザリンを排斥する方向に動いているといえる(二色残しているが)。代替顔料は多彩。



ターレンス(蘭)

パーマネントマダー ライト    PR254,264,(ピロール)PV19(キナクリドン)
          ミディアム  PR264,PV19
          ディープ   PR264
パーマネントカーマイン      PR214(縮合アゾ),PB29(ウルトラマリン)
カーマイン            PR176(ベンズイミダゾロン)
キナクリドンローズ        PV19(キナクリドン)
パーマネントレッドバイオレット  PR202(キナクリドン)

このメーカーがいかに極端かがよく分かる。アリザリンは跡形もなく、キナクリドンとピロール中心に置き換えている。



ウィンザー・ニュートン(英)

キナクリドンレッド         PR209(キナクリドン)
パーマネントローズ         PV19(キナクリドン)
アリザリンクリムソン        アリザリンレーキ
パーマネントアリザリンクリムソン  アントラキノンレッド
パーマネントカーマイン       キナクリドン、ピロール

「パーマネント」を「ヒュー」のような意味で使っているのだろう(本来のレーキは退色しやすいから)。キナクリドンが多い。



マイメリ(伊)

クリムソンレーキ     PR206,PR122(キナクリドン)
ローズレーキ       PV19(キナクリドン)
ティツィアーノレッド   PR209(キナクリドン)
サンダルレッド      PR254(ピロール)

これもアリザリンは絶滅。しかし選択肢が少ない気が……。



シュミンケ・ムッシーニ(独)

フローレンタインドレッド       PR179(ペリレンマルーン)
トランスルーセントレッドオキサイド  PR101(酸化鉄)
マダーレーキブリリアント       PR209(キナクリドン)
アリザリンマダーレーキ        PR83:1(アリザリンレーキ)
マダーレーキダーク          PR254(ジケトピロロピロール)PV42(キナクリドン)
カーマイン              PR254,PV42,PV19

ムッシーニはよく分からないシリーズだ。この比較はともかく、全体的にやってることが一人だけ違うというか、浮いている。たとえば、ムッシーニのビリジャンは、明るい黄緑(やや不透明)なのである。おかしいだろ。なので、あまり使った事がない。
例えるなら、「自称最強」を謳ってる不遜な奴だけど、あんまり登校してこないのでその強さを知るクラスメイトがいない。そんな子。



以上の顔料は、なるべく間違いのないよう努力はしたが、表記の統一とか細かい所はいい加減だったりする。また調べるのはけっこう大変なので、集中が切れて誤った可能性もあるかも。その場合はご容赦。


さて、海外では、キナクリドン、ピロール、ペリレンなど、さまざまな顔料がアリザリンに代わるものとしてある。これらは最新の顔料で、堅牢生や耐光性は非常に高く、信頼に足るものだ。

では、日本ではこれら顔料は油絵具への応用がされていないのか? よもやメーカーが知らないということはあるまいが………

と思って、改めて大学の世界堂で色々見たら、ちゃんとあった。

もう疲れたので番号は書かないが、ホルベインだと「コバルトバイオレットライトヒュー」「モーブ」「ペリレンレッド」「アルプスレッド」など、クサカベだと「キナクリドンマゼンタ」「ローズバイオレット」「コバルトバイオレットヒュー」「キナクリドンローズ」など、マツダだと「ルビー」「マゼンタ」「オーロラピンク」「ブライトレッドライト」などに、上のような顔料が使用されていた。

つまり日本では、これらの新顔料を「アリザリンに代わるもの」としては扱ってないということだった。これはたとえばキナクリドンが、すべて必ずしも透明とは限らないことにもよるだろう。そして相対的に、アゾ顔料の活躍が多いわけである。

しかし、こういった「新色としての追加」というのは、なかなか難儀なものがある。バーミリオンやカドミウムレッドなど、魅力的な不透明赤が揃っている現代において、後発の絵具はよほどの売り文句がないと注目されづらいのである。しかもこれらはしばしば高額だ。たとえば、クサカベのキナクリドンローズはシリーズE(六号チューブで924円)。これは透明色だが、クリムソンレーキが409円で買えるという選択もあるなか、予備知識なしにあえて選ぶ人がどれくらいいるだろうか?

おそらく、時間をかければこれらの顔料も一般的になるかもしれない。そしてユーザーからの十分量の感想が得られれば、またメーカーはなにかしら動くかもしれない。


結論
・海外ではアリザリン駆逐の流れ
・国内はあまりそういう感覚なし、アゾ系で代替。最新顔料って認識されてるの?


以上、少女の頭の中でした。私おとなになる。


日々のつれづれ

 ダ・ヴィンチ恐山氏と会う夢を見た。彼は妻を伴っており、それが「輝き女子」さんであったことに驚く。起きてから、それはそれで悪くない設定だなあ、とか思った。


 最近になってはじめて小林秀雄の評論を読んだのだが、あまりに面白くて驚く。論そのものの切れ味もいいが、書き方が読者の心を乱す。先日居酒屋で一杯やりながら「平家物語」を読んでいて、感動してめそめそ泣いていた。


 被災地復興資金源にと、また煙草税が増えるらしい。「この間は『健康のために喫煙者を減らそう』と増税し、今回は『復興のために喫煙者はもっと税を払え』とは、姿勢が矛盾しているではないか」と喫煙者はお怒りの様子。面白かったのは「健康に悪い物は得てして魂にひと時の安らぎを与えるものだ。酒、煙草、女がなければ生きる喜びがない。酒がなかったら、人生や仕事に絶望したとき何を飲めばいい? 煙草がなかったら、男はセックスの後何をすればいい?」という超絶ハードボイルドさんの発言。「セックスの後は腕枕でもすればどうだろう」と突っ込まれていたが。
 私は禁煙に成功したが、今でも時々煙草を吸う夢を見る。誘惑に負けて後悔で一杯になって、目が覚めてホッとする。喫煙者にとって煙草は人生の一部で、禁煙とは、ちがう生き方を選ぶことだ。(ややハードボイルドさんな発言)


 夏なので扇子を買った。前の扇子は数年前、公演中の舞台裏でスモークの煙を扇いで散らしているうちつい力が入り過ぎてへし折れてしまい、それ以来扇子のない人生を生きてきたが、何かに負けて買いけり。和紙のものを選んだので、一緒にザクロのお香も買って焚き付ける。扇ぐとほのかに甘い香り。ロマンチックかつハードボイルド。発狂系女子。


 来年の展示に向けて、そろそろ大きめの絵を描こうかなと思い、とりあえず的にP40とF100のキャンバスを張る。六畳間では100号を張るのは大変で、150はどこで張ろうが大変だ。もう一度150くらいの大きさで描きたいが。部屋に入るのか疑問。あと初音ミクをフランドル技法で描く計画を本気で立て始める。


アメリカン・ドリーム

アメリカ海軍に入隊する夢を見た。

最初は単なる引っ越しだった。引っ越し先は非常につましいというかボロい寮のようなもので、共用のキッチンや浴場があり、住人は仲良く暮らしていた。どうやらみな美術系の人らしい。

私は自分に割り当てられた部屋に入った。荷物はまだ届いておらず、がらんとしている。窓の外は新宿の高層ビル群が見えた。夜で見通しは悪いが、天気があまりよくないのが分かる。

出入り口のドアの横にトイレがあった。見たこともないような形状でかなり汚く、前に住んでいた人が使いっぱなしにしていたようだった。近いうち奇麗に掃除しなければ、と思った。また、その手前にある手洗いは普通だが、手洗いの下の観音開きの棚を空けるとひんやりと冷気が。どうやらここが冷蔵庫のようである。なんか不衛生な気がするしトイレの横だし、備え付けのありがたみが全くない。

そうこうしているうちに、外で落雷があった。窓が光り、雷鳴が轟く。携帯電話が落雷速報を鳴らす。私が部屋の外に出てみると、住人たちは雷はまるで気にせず、夕食の支度をしていた。このとき、はじめて彼らとまともに対面した。
みな気さくないい奴っぽかったが、私は人の名前を覚えるのが苦手なので、「メガネ」「髪を分けてるメガネ」「ハゲのメガネ」などといった覚え方をしていた。メガネ率が高かった気がする。そのうち「食材を買いに行こう」という話になったので、同行した。

しかしスーパーに着く頃には、その集団はアメリカ海軍に変身していた。髪を分けてるメガネが軍曹のようになり「これから株の取引を行う!」と唐突に指令する。合図とともに兵たちは一斉に株を売り始める。システムとしては以下のようなことだ。スーパーの陳列棚には食品やスポーツ用品など、さまざまな商品が置かれている。その棚の裏には、その商品の製造元の会社の係員が控えている(見ることはできない)。その係員と商品を通じて意思疎通し、株を売るのだ。たとえば、ある兵は子供用のプラスチック製バットに「1万5千株買いませんか?」と言うと、プラスチック製バットから「いいですね、買います」と返ってくるのである。

軍曹は私に「売る量は五千、一万、二万のまとめが一般的だ。たくさん売れるほうがいいが、相手を見て量を見極めろ。時間との戦いだから駆け引きはするな、なるべく一撃で落とせ。ほかのことはやりながら覚えるんだ」と言うと、自身も取引に向かった。しかし、私には何がどうなってるのかもよく分からないのだった。一帯はまるで魚市場の競りのように急速に取引が行われている。悠長になってはおれんと意を決し、落花生や米菓子などの食品から当たってみた。うまく行かないこともあったが、こちらの持ち掛け通りに売れることもあり、そういうときはとても嬉しかった。しかし株に興味のない会社もあるらしく、そういうところは冷たい対応を取るマニュアルらしかった。チョコボールに「株五千ほどいかがですか?」と話しかけると「うるせえ、死ね」と返ってきたのが印象的だった。

やがてほぼ全ての商品との取引が終わり、一同は引き上げ始めた。私は少し残って粘ったが、もうどこも取引できる所は残ってなさそうだった。いい加減帰ろうかと思っていたそのとき、地面に砂粒ほどの小さな宝石がいくつか転がっていることに気がつき、それを拾って帰った。後で分かったが、宝石は株取引がうまく行けば行くほど発生するものらしい。海軍は宝石を集め、鍋で煮ていた。何をしたいのかはよく分からない。鍋の近くには、他の兵がもってきたのであろう宝石が多くあり、その中には小石ほどの大きさのものもあった。私はそれを見て、もっと大きなものが欲しいと思った。

おりしも、つい先日、中国軍とNATO軍が海戦を行い、中国の戦艦が数隻沈んだと聞いた(今時戦艦とはこれいかに、と夢ながらに思った)。私は、戦争が大きな宝石を生むことを知っていて、沈没した戦艦に眠る宝石を取りにいくため、ひとり海を泳いでいった。海軍だから泳ぎは得意なのである。

やがて海戦があった海域に到達したが、深さはせいぜい2mほどで、戦艦はなかった。しかし眼を開いたまま潜ると、砂地のなかにいくつか石が見える。それを取って見れば、自然に磨かれた奇麗な宝石である。霜降り牛肉のように赤と白の交雑があったので、ルビーと不純物かと思われた。またそれは見る角度によって柄が変わり、滲むような光具合がとても美しい。もう一つ石を拾ったが、こちらはよく覚えていない。二つの石を紙袋に入れ、両足ではさんで持ち、手だけを使って泳いで戻ろうとした。

このとき大変なあやまちに気づいた。行きはよかったが、手しか使えない帰りはすごく大変なのだ。私は世界のはじっこにいた。それは海なのだが、プールの隅のように、もう後と左には行けない場所だった。その場所には何度か来たことがある気がするし、帰るのもたしか大変だった。泳いでいるうちに左岸に町が見え、看板などにハングルが書いてあるので、今は韓国の近くだなと分かり、もう面倒臭いので陸に上がった。いつのまにか全裸だった。でも不思議と恥ずかしくなかった。町並みにはヤシの木が植えてあり、どこか南国風で、あまり韓国らしい風ではなかったが。

歩くうち、向こうから知った顔がやってきた。美術予備校で同期だった連中だった。あまりの懐かしさに驚く。なぜ裸なんだ、と突っ込まれる。

そのとき唐突に、爆音とともに煙がたち、マスクにメガネの男が現れた。同期の連中は「寮のメガネ君だ」と言うが、違った。私は「違うよ。あれはクロノ・トリガーの制作スタッフの偉い人だよ」と言った。同期の人は「そんなのどうして分かるんだ」と聞いてきた。「キャラクターが見れるエンディングがあるだろう。真っ先にラスボスを倒すと見れるんだ」私は言ったが、同期の人はぽかんとしている。どうやらマルチエンディングという概念が理解できていないらしい。私は必死に「クロノ・トリガーは最初から主人公が最強の設定で始められるし、その場合シナリオの進み具合に関係なくいつでもラスボスに挑戦できるんだよ、そしてシナリオのどのタイミングでエンディングを向かえるかによって、その内容も変わってくるんだ」と説明したが、ついに分かってもらえなかった。結局「なんでそんなことも分からないんだ!」とキレてしまい、気まずい別れをした。

気がつくと、平塚を歩いていた。駅の西側の、線路をくぐる道路の近くである。ようやく日本に帰ってきた。
さっきの予備校の同期とは異なる二人の人間がどうやら同行していて、彼らは私以上に疲れていた。彼らは私の宝石を欲しがっていた。「あなただけ宝石をもっているのはずるい」と彼らは言った。
私は「お前たちは幸せを探すのが下手だ。もっと生活に注意深くなれ。たとえば、あそこにある自転車を盗んでみろ。ずいぶん楽になるはずだ」と言った。彼らは言われた通りに自転車を盗み、楽しそうに走っていった。すると背後から外人の男女が現れ、「Hey! What do you do!?」と言って怒りはじめた。どうやら自転車の持ち主らしい。私は平静をよそおい「ネヴァーマインド」とか「ノープロブレム」とか適当な英語でごまかしつつ、自転車を追った。坂道を下ったあたりで自転車には追いついたが、外人の女の方が、手に持った飲み物をこぼしてしまったらしく狼狽していた。見ると、女の手には陶器のコップに、なんだかアクの浮いたよく分からない温かい飲み物が入っていた。それは何だ、ホワットイズディス、と私は聞いた。彼女は「サッヴァーユ! サッヴァーユ!」と、必死に伝えようとしている。しばらくして、「もしかして『そば湯』か?」と思い至った。私はすぐ側にあったタバコ屋に行き、オヤジさんに「そば湯をください」と言った。

そば湯が出来上がるまで、中に上がって休ませてもらった。海の家のようである。畳の上に無造作にサーフボードが転がっており、外人の男の方がおもむろに乗ってみせた。彼はバランスを取りながら腰を低く落とし、手をくるくる回して、何かをイメージしているようだった。そして「こう、波が来るとこうしてさばいて……いい感じに乗れてきたら……なんかいいよねそういうのって……」と言った。
「日本語話せるのかよ!」私は言った。

そうしていると、寮の住人たちがぞろぞろやって来て、私たちに気がつくと気さくに会釈した。外人カップルも会釈した。どうやら皆長い付き合いの友人らしい。メガネ君が「もう十年の付き合いだ」髪分けメガネ君が「俺は八年だ」ハゲメガネ君が「もう七年だ」、といったように、皆どれほどの付き合いかを言っていった。私が「そうか、俺はまだ皆に出会って間がない。とてもかなわないな」と言うと、「これから、一緒に長く続く付き合いをしていけばいいのさ」と言ってもらえて、ちょっとうれしかった。


そこで目が覚めた。


プロフィール

金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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