鬼労働
というと優雅な響きだが、まったく実がともなってない場合がある。
今日は実際には絵を描かず、絵具の仕込みをした。
既成のポピーオイル練りのシルバーホワイトでは下地には適さないため、いちど新聞紙に油を吸わせて、あらためてリンシードオイルで練り直すのである。
また、厚塗りに耐えられるよう、樹脂を混ぜ込む。
採用したのはウィンザー&ニュートンのオレオパスト。アルキド系。安価で信頼のクオリティ。
これを
シルバーホワイト20:オレオパスト5:リンシード:0、1
くらいのレシピで混ぜる。
これは大作用に使うもので、3~4日寝かす。
寝かしとくことで、メディウムと顔料が、新たな配合でしっとりとなじむ。
るるるー
練るのに大変労力を消費する。
そのあと、自家製シルバーホワイトを練ってみる。
レシピ
顔料 マツダスーパーシルバーホワイト 35mlくらい
サンシックンドリンシードオイル(自家製) 10mlくらい
ダンマル樹脂 小1欠け
晒し蜜蝋 半個
サンシックンド練りの絵具なんて、絶対店では買えないよ!
練るの超大変だったけどね! 死ぬほど重い!
練り棒を両手持ちして、「うおおおおおおおおおおおおお!」とか言いながら練ってた。そんな事してるから見た目ソルジャーになっちゃうのかもね。因果応報。信賞必罰。へちゃー。
たった40mlの絵具を練っただけで、全精力を使い果たした気分だった。
ただ、ラングレ先生の記述によれば、誠実な職人の手練りがいかに非効率かはかなり残念めいて書かれている。
手練りの非効率さは絶望的である。顔料によっては、とくに微妙なものの正しい練り合わせにはかなりの時間を要する(茜レ―キ一kgを練り合わせるのに、良心的な職人は一日かかる)。
手練りの絶望感は、やってみれば簡単にわかるだろう。
今日一日、労働のようにきつかった。
夜、やはり自炊がめんどくさいので、駅前の飲み屋に行った。
ビールを一杯飲んだ後、ちょっとたくさん飲みたい気分だったので、ボトルで焼酎を頼んだら、今日閉店なので残ったら持って帰ってと言われた。
閉店?
え? と思ったが、どうやら本当に閉まるようだ。
そうなのか。
とりたてて特別なところのない平凡な店だったけど、通いやすくて気に入っていた店だった。
寂しい。
焼酎をダラダラ飲んでたら私が最後の客になってしまった。
むう。
まだ周りにも客がいるとき、近くの座敷の子どもが私の近くに走りよってきて「なにしてるのー!? なにしてるのー!?」と声をかけてきた。
これは、『ソフィーの世界』の「あなたはだれ?」に匹敵する哲学的問いだと思った。私はこんな所でひとりで何をしているんだろう? るるるーるるー
戦
世界堂に行ったときガラクタ市をやっていたので、格安の木製絵具箱を買った。全く塗装されてない白木。中に木パレットがついていたが、これがベニヤ板を切り抜いただけ、しかも反ってるというゴミのようなもの。しかし塗装すれば使用に耐えうるので、アクリル絵具で数回、アクリル仕上げニス数回を塗る。乾燥中なり。本体の箱は外部をオイルステイン、内部を油とワックス。塗装は素人なのでヘタクソ。やはり立体になると、物から立ち現れる相の豊かさというか、色彩がぜんぜん違うね。平面というのはけっこう、この世の中にあっては特殊ルールなんだね。
フェルメール、「真珠の耳飾りの少女」と平行して「天秤を持つ女」(生え際ヤバ子ちゃん)を描く。おでこが魅力的。美しい絵は強すぎる光のように心をくらませる。
マチエールの気韻。
夜までぶっつづけで描いてくたくたに疲れてしまい、自炊が面倒臭かったので、駅前の沖縄料理屋に飯を食いに行った。アサヒビール中ジョッキが200円で飲めるので、ちょっと飲みたい時などに最近行くようになった。
店のおばちゃん「先週も来てくれましたよねえ」
私「ああ、そうでしたっけね。どうも……」
おばちゃん「……自衛隊さんですか?」
(注:近所に自衛隊駐屯地がある)
私「違います!」
ちょっとショック!
なぜだ! 俺は少女になるために日々励んでいるのに! みんなの目にはソルジャーに映っているのか!? 確かにいまスポーツ刈りでいかついかもだけど! もうどうしたらいいんだ! 誰かチョコくれ!
解説さん
目が覚めて「嘘つけ!!」と思った。
デルナー教授の『絵画技術体系』によると、サイクロヘキサノン樹脂の項目に補助的に触れられている。
サイクロヘキサノンとメチルサイクロヘキサノンとの二つの化合から、あるいはその重複組み合わせから水のような明るい合成樹脂ができる。この樹脂は申し分ない耐光性をもち、完全に中性で、酸・アルカリ、その他の薬品に対して安定している。さらに樹脂そのものが乾くので脂肪油と混ぜても高い弾力性を保ち、よく密着する皮膜となって乾く。メチルアルコールとエチルアルコールを除けば使用されているあらゆる溶剤に溶解する。融点は七〇度Cから九〇度Cの間である。天然樹脂とは異なり合成製品なので不純物質を含まず、均一な結果が保証されている。
ドイツで多用されたAW2樹脂はサイクロヘキサノン樹脂とメチルサイクロヘキサノンからの縮合生成物であるが、今日製造されていない。絵画技術用としてはケトン樹脂Nに代替された。この樹脂もやはりサイクロヘキサノンの縮合生成物であり天然樹脂のように縮合-酸化-重合を長期間続行することなく、その特質は不変である。この種の合成樹脂型は美術家用絵具会社のみならず、国際的な絵画技術研究所や修復研究所で使用されており、ためらうことなく使用できると報告されている。
ゲッテンス+スタウト『絵画材料辞典』では化学的な記述にとどまっており、ラングレ先生の『油彩画の技術』では触れられてない(合成樹脂じたいがほとんど言及されてない)
基本的に合成樹脂は非常に耐久性の高いものであるが、絵画材料においては合成樹脂の代名詞になっているアクリル、そしてアルキドの陰にかくれて、それ以外のものは一般のユーザーにはほぼ全く知られていない。
その他のマイナー樹脂にフェノールなどもあるが、これはデルナー教授には防腐剤扱いされたり、ラングレ先生にも「今日までのところ、いい成果を上げてない」と書かれたりして、不憫である。
ばああああああああああああああれんた
O畠に「チョコくれよ」と言ったけど、くれなかった。おかげで今年のバレンタインデーはチョコ0だった。腹いせに国分寺の「あなぐら」でスピリタスを飲む。
それでも気が済まなかったので、今日自分でチョコを買った。
うわぁー。
例のんふんふ歌よろしく「おさわり探偵なめこ栽培キット」アプリが流行しているので、僕も便乗してなめこ栽培キット(リアル)を買ってみた。

同時購入したしいたけ床。なめこはまだ何も出てない。
これで来月にはきのこ食い放題だぜ。
さて、MMD。
動画も出そろい、趨勢も決まってきた。
DFFパロディ。圧倒的な支持を得て優勝を確実のものとしている。私個人としては先日挙げた「水色と宇宙船」の構成、演出、色彩の計算高さ、緻密さ、自由さを強く評価したいところだが、この動画も1位であってなんら不思議でない出来である。
これは圧巻!!
よくわかんないけど怖い。
モデル議論。
猫。
これは今回の動画じゃないけど、酔っぱらった弱音ハイテヤンヨがかわいい。
MMDといえばこの曲だが……。愛のなせる動画だと思った。心とはやはり、技術、知識とは全く異なる体系としてたしかに創作に関わるものとしてあるのだろう。
チョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレート
フランちゃん
チューブ入りの樹脂が切れてきたので、ルフランのフレミッシュメディウムを買い足す。
ルフランは絵具も高顔料で品質が高いが、なによりもチューブ状メディウムの意味不明なクオリティに驚かされる。一体何をどうすればこんな美しい物体になるのか、皆目わからない。(練り物の場合は、たいていどのメーカーも内容を具体的に書いてくれない)
他メーカーの増量剤が、白濁したやぼったい質感で、絵具に混じればぶよぶよとエッジを損なわせる、決して表現上メリットが勝るとは言い切れないものばかりの中、ルフランのものだけはスルリと絵具にとけ、量さえ間違えなければ何も損ねる事のないまま作り手の意図を反映してくれるのである。
いったいその組成はどうなってるのか……と思ってたら、さっきネット上で、一覧表を見つけてしまった。

これは便利。
リナックス並の完全オープンソース。良心的なメーカーとはこういうものを言うのであろう。
ちなみに画溶液の表は以下。

8
全体に関する感想はとりあえずおいといて、票をいれたのを。
正統派。今回はこれが一番いいかな。
大好きなポンポコPさんの作品。常連らしい力の抜けた作品。
動き系。
評価したのは以上。以下は「とりあえず」。
プロレス。
動きの作り込みがすごい。MMDも進化したものだ。
季節感もあってちょっとほっこりする。
今回はしゅしゅがクローズアップされてるみたいなので、票をいれてみた。しゅしゅミクちょっとかわいい。
X.D.ラングレは萌えキャラなのか? 最終鬼畜技法書油彩画の・G
桁違いにテレピン・絵具を消費する。
古典技法の模写は、注意すれば全く汚さずに描けるが、今日は床も服も絵具がついた。
せまい六畳間ではなおのこと汚さずに描くのは難しい。
やはりツナギ必要。
またテレピンの臭いは強烈で、服に移る。
スーパーに買い物に行っても、始終気になる。自分自身で気になるのだから、周りからみれば相当臭いに違いない。公害である。
テレピンの代わりにペトロール(石油、鉱物系溶剤)を使えば臭いはだいぶ抑えられるし、これは劣化しない(テレピンはほっとくと駄目になる)という利点があるが、欠点としては天然樹脂を溶かしきれない、溶かせても濁るというものがある。
とまあ本には書いてあるが、ルフラン社のフレミッシュメディウム(コーパル樹脂系)を、ターレンス社のホワイトスピリット(石油)での希釈実験してみたところ、問題なく溶解した。メーカーがぐっちゃなのはご愛嬌。色々試して、支障ないならペトロールの日を作ってもいいのかもしれない。
今日のラングレ先生はシッカチーフのご講釈。
マンガン塩が含まれたシッカチーフ・クルトレは、どす黒い色をしたニス状で市販されている。これは強力な乾燥促進作用があるが、長期的に見れば絵具の耐久性を著しく減少させるものだ。なので使用にあたっては、その量を抑える事に気をつけなければならない。
先生は警告する。
要するに、この物質の濃い色は、画家に「よく考えよ」と注意をうながすという利点をもち、できるだけ少な目にまぜて使えばよいのである。
私はこれを読んで、下の歌を思い出した。
単体でみつからなかったのでメドレー動画になってしまったが、4:55くらいからはじまる中原麻衣「バナナの歌」である。
いってることが全く同じだと思った。
ラングレ先生は保存キチガイの偏屈オヤジに生まれたせいでこんな本をかいているけど、萌えキャラに生まれていればこういう風になっていたに違いあるまい。異なるのは表層のみで、その本質はなにも変らない。
そして恐らく、私はラングレ先生と萌えキャラの、中間の位置あたりにいるのであろう。
結論:私の半分は萌えキャラ
シルバーホワイト嬢の件で電凸
・まず顔料濃度が違う。スーパーは体質少ない。これが一番。
・スーパーは顔料のグレードが高い。同じ鉛白でも色々なメーカーがさまざまな色味、番手を出してるので、その選択によって出来上がりが違う。
(スーパーのものは、チューブに『三井金属鉱業KK製顔料使用』と書かれている。顔料のメーカーが記載されている絵具は恐らくマツダスーパーのみであろう)(外国メーカーにもあるかもしれないが、外国語が読めない。ただ、それらしい記述はあまり見られないような……)
・練り合わせ材、工程は同じ。
・関係ないけど、電話の保留音がスピッツの「春の歌」だった。笑った。
という感じ。
マツダスーパーは、クサカベ、ブロックスと比べても最も明度が高かったので、顔料には相当気合が入っていると思われる。ただマツダはポピー練りなので、最初から使う場合は適宜リンシードを足した方がいいだろう。
個人的には、工程に差がないというのが少し意外だった。国内のライバルメーカーのクサカベは、専門家シリーズ「クサカベ」と、その上位版というか、やや古典技法向けの「ミノー」、さらに上位板というか悪ノリの「ギルド」シリーズとで、絵具の熟成に時間をとるなど工程を変えている。シリーズが変ればそういう変化はあるものだと思っていた。
まあ、シルバーホワイトは非常に屈強な顔料で、よっぽどな使い方をしない限り短期で事故を起こしたりはしないから、体質が多少多かろうが(白だし)不純物が入っていようが瑣末といえば瑣末なのですがね。清楚にして大胆、たおやかにして豪腕、それが彼女。そこにしびれるあこがれる。
アスファルトで化粧しろ
ビチューム(アスファルト)についての恨みつらみをぶちまけておられた。
ビチュームは19世紀に大流行した焦茶色の顔料(というよりは染料性質であるが)である。ミイラの防腐剤にも使われ、これから原料として採られたこともあったのでそのまま「ミイラ」という色名にもなったりしている。当時の多くの油絵描きがこの感傷的な色合いに惹かれて多用したが、油との相性に決定的な欠陥があることが証明されている。
アスファルトを用いた絵画は絵具層が縮んで〈アリゲータリング(*わに皮のような亀裂やはん紋ができること)〉ができるのですぐそれと分かるようになる。その上にこれより硬く固まる絵具の層が置かれると、割れやまくれが起こる。ノイハウスは温度調節装置のない美術館では真夏の暑さで画面全体がすべって、位置関係が永久に狂ってしまった作品がある、という。アメリカでも温帯地域にあるいくつかの美術館では、一時期アスファルトを夢中になってすりこむように用いていたミュンヘン派の絵画の多くをだめにしてしまった(同氏によるDoerner著 The Materials of the Artist の訳書 p.89の訳注を見よ)、と述べている。
『絵画材料辞典』R.J.ゲッテンス、G.L.スタウト
現在絵具状のアスファルトは入手不可能であるが、恐らく色合いが似ているのであろう製品はある。ターレンス・レンブラントの「アスファルタム」は、イルガジンイエロー、アリザリンレーキ、フタロシアニングリーンの混ぜ物による、似せた色のようだ。
実はこの絵具、学部の一年生のとき、恐いもの見たさで使っていた事がある(ターレンスのが偽物というのを知らなかった)。ので、後になって絵がどう壊れるのであろうか、と内心どきどきしていたりもした。一年生の時からもう七年経ち、本物のビチュームなら変化がでてきていい頃合いではあろうけど、一年の頃描いた絵なんて今更どうでもいいといえばどうでもいい。
まあ、当時ビチュームにハマった人々の感動を安全に追体験するのに、ターレンスのアスファルタムはいいのかもしれない。ただし、顔料を三つ使っている絵具なので、混色に気をつけなければならない。絵具は3色以上混ぜると濁り始めるといわれており、これは製品の時点で限界値に近いと言える。だからキャンバス上でこねくり回したり、パレット上で展開したりはしづらいかもしれない。おそらく本物のビチュームに比べて、この点は明らかに劣ると思われる。
こういう点など、ヒューやチント(似せ)が、本物に決して迫れない所以を如実に物語っている。絵具は色だけでなく物性も性質として備えていて、同じ顔料でないのなら物性は異なるのだから。
アスファルトは、われわれの生活の中できわめて広くかつ重要に位置する物質である。我々は普段彼らを踏みしめるかたちでコミュニケーションをとるが、ほんの少しアプローチを変えるだけで全く違った相を見せてくれる。そしてそのことは、すべての物質において言えるのである。
ももも
やってみてよく分かったが、フェルメールは模写に非常にいいな。古典ほど厳密でなく、ほかのバロックほど奔放でないので、着実に楽しく追える。
学部生のころワイエスを模写した時は、始終不条理を感じたが、本来模写もこういった楽しみとともにあるべきであろう。
グリザイユのベースはモノクロームが一般的であるが、私はシルバーホワイトとローアンバーのモノトーンでやっている。少し暖かみがあった方が好みなのと、ローアンバーに含まれるマンガンが乾燥を早めるからである。
男の招集
ちょっと慌ただしいが、顔を出しに行く。
今日のベストやりとり
S氏「正常位って誰が決めたんだ? 誰が『正常』位って名付けたんだよ!」
S木「それは…………王だよ」
こうして武蔵野の夜は更けるのであった。
メタル・ジャスティス
昔の脚本家って自由だなあ。
たとえば同じカブトボーグの脚本でも、大和屋暁は技術でおかしく仕上げているけど浦沢義雄は感性でやってるような。
(浦沢さんは大和屋の師匠にあたる)
アルカイックなものは、歴史の線の上でつねに洗練されていく運命にあるが、同時にそれそのままでとても魅力的なものでもある。この奇妙な美は、進歩という観念を知る我々をつねに悩ませる。
マシンガン息
小スピッツが東京の教職を得る。おめでとう。一方で一昨日、ある友人が都落ちしてしまったのだった。さまざまな人生をかいま見る。20代というのは、多くの人にとって、段々と結論がみえてくる時代になっている。
そんな中、ジャモさんはいまも物々交換所を国分寺に展開したりしていて、勢いが変らずさすがである。
景気よくいきたい。
来週でゼミが終るので、展示に向けて脳を切り替える。