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まんがとか

 衛藤ヒロユキの「がじぇっと」を読んだ。とても面白かった。皆読め!

 衛藤ヒロユキはドラクエ四コマ描いてる頃から知ってるけど、当時はただの狂人だとおもってたが、「魔法陣グルグル」を経てギャグもストーリーもいいものを作るようになったので、ものすごく化けた人だと感じる。
 大根を持って「ふんどし!」とかやってた人と、思春期の少年少女の切ない心を描写する作品と、同一人物とは思えん。(画力も猛烈に上がってるし)

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 この伝説の「ふんどし!」、ネームの段階で最初は編集者に注意されて描かない事になってたが、その後ごり押しで説得して掲載にこぎ着けたようである。

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なにしてるんだ……

 指と脳の運動として習作を毎日書いているけど、今書いてた作品は長くなって、三日かかって書き終わってみて、原稿用紙換算でどれくらいになったかな? と計算したら、91枚だった。
 
 その労力、本番に使えよ……

 この枚数だと気軽に人にも見せられんし、なんだろうなほんとに……
 まあ、いいでしょう。内容自体は気に入っている。書けてよかったと思う。どんな話かというと、「金の斧」「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」をごっちゃにした話。テーマは「原発」。(タイトルは『死の灰かぶり姫』)
 読みたい人は、私と友達になってください。



 
 
 

そんな時もあろう

 最近の教訓。
 一日の執筆量が一万字を超えたら、その日はなるべくそれ以上書かないようにする。

 一万字を超える時点で、ちょっと悪ノリペースなので、
 それ以上書きたい気分になってるというのは、ほめられることではない。
 躁転する恐れがある。


 躁状態というのは、普通の症状は、異常な気分の高揚、散財、通常では考えられないような行動、怒りっぽくなる、などと色々あるが、私に限った症状を言うと「猛烈な勢いで文章を書きまくる」ということになる。

 どうにも、過去にそういう状態になった時を思い返すに、わりと文章を書き散らす方向に走る癖があるというのが、だんだん見えて来た。
 酷いときには、一日で四万字以上書いたこともあった。これはクオリティはともかく、量的には薄めの単行本一冊に相当する。もちろん、寝ないし、食事も取らない。そして、自分がおかしい状態だと気づかないのである。それが躁や鬱の怖いところだ。だから、そういう状態になる前に、まともなうちに「このままじゃ、ふりきれるな」と、自制して均衡を保たなければならない。そもそもまともな人間は、一日に一万字も書かないのだ。

 また、うっかり躁状態になると、その後にくる鬱がひどくなる。これはエネルギーを使い果たして枯れ木になるみたいな説明が多いが、脳というのはやっぱり敏感な器官で、そういう形でバランスを取ろうとしてるのかな、とも思ったりもする。
 ともあれ、鬱は辛い。

 と言うような話をS氏とした。彼も最近体調がよろしくないのである。なぜか私の周りは、鬱病とか統合失調症とか、そういう人間が多い。べつにそういうコミュニティじゃないのに。類友か。

 いったい健常者とはどこにいるのか、と、つくづく思う。俺など、さし歯すら抜けて、タバコの煙をふーと拭くだけで歯が飛ぶ始末だ。歯が飛ぶんだ! おまえら、歯が飛ぶって、そのきもち、分かる!? あっ、いまこの瞬間! 今この瞬間、これ書いてる今この瞬間、また差し歯がぽろっと落ちたよ! なんにもしてないのに、歯がぽろっと落ちるの! おまえら、そういう気持ち、分かるの!? 笑うな! くそどもが! どうせ俺は歯抜けおじさんだよ! でも明日歯医者に行って何かつめてもらうから! そしてお前らの前歯を、折る! 人類に自前の前歯など必要ない! みんな、前歯など折ってしまえばいいんだ! 差し歯業界を潤せ! そして遠い未来、人類は歯を捨て、差し歯を選んだという……
 








習作「文明開化街の料理店」

 「寿司屋死す」うどん屋はそのビラを毎日のように撒くのだった、言霊として、起源のない反復として、失われた時を求めている振りをして……文明開化を果たしたその都市には寿司屋は過去の遺物であり、うどん屋は一刻も早く寿司屋を死に至らしめるのがこの街のためであると信じていた、信じていた、そう、コーラの泡、流れ星の尾、少女の涙の跡のように、いつもはかなげに、そのビラは風に飛んでいった、そして空に吸い込まれるように、吹雪のように、あられのように飛んでいった、それは文明開化によって煉瓦敷きになった道路が剥がれて白く色褪せめくりあげられてしまったようでもあった…………
 この歪んだ気遣いに当の寿司屋は己の感情を抑えきれない。「許すことは不可能、それとも愛?」寿司屋は悩んだ。「それとも……愛?」
 そういう店の外にまで聞こえてくる寿司屋の大きな独り言を聞いて、うどん屋は笑った。「なにが愛だ。俺がやってることの意味をよく分かっていないようだな! 風は吹き、雨は降り、この街にはくたびれたビラでいっぱいになる、おれの作ったビラでいっぱいになる、やがて地面は埋め尽くされ、寿司屋はビラが貼られて、もう何屋かわからなくなってしまう。それでも俺の言いたいことが分からないのか! 好きだ! 結婚してくれ!!」
 「…………?」
 うどん屋が寿司屋の前でそうしているうちに、そば屋はうどん屋に放火した。
 「ああ! すごい! うどん屋燃えてる! うどん屋燃えてるよおおおおおお!!」そば屋は興奮のあまり、その場でそばを打ち始めた。うどん屋はごうごうと音を立て、ぱちぱちと爆ぜながら火柱を吹き上げて黒い煙を沸き上げていく。それでようやく、うどん屋は自分の自宅兼店舗が燃えていることに気づいて振り返った。うどん屋は寿司屋の向かいだった。
 「そば屋!」うどん屋は驚いて、そば屋に目をやった。「おまえ、裸じゃないか!!」
 それは悲しみに明け暮れ果てた哀れなそば屋のせめてもの反抗だった。ハルピンで生れ落ち、孤児として育ってこの街に密入国し、文明開化の嵐の中を生き抜き、この炎の前で服が焼け落ちてしまった今、彼に失うものはなかった。打っていたそばすら火に近すぎて、焼きそばになってしまっていた。なにもかも、もう手遅れなんだね。だからぼくは、夢の中でだけでそばがきを抱きしめ続けているんだ。胸に疼痛が走る。脈が乱れる。そして戦争が終わった! 戦争が終わり、俺たちは荒野に投げ出されてしまったのだ! もう風景もない、磁石もどこも指していない、帰る俺たちを抱きしめてくれる者はいないのよ!! と、うどん屋は言った。肩を抱かれたそば屋は、ぐったりとうなだれるしかないよね。それからうどん屋は彼に何か着せないと、と思い立ち、寿司屋の出入り口に自ら張ったビラの封印をビリビリと引裂き、中に入った。カウンターの向こうで体にバスタオルを巻いて立っていた寿司屋は「あっ……」と言い、頬をあからめた。「貸せ!」うどん屋はそのバスタオルを剥ぎ取る。やあーん! と寿司屋が叫び、胸と股間を押さえながらしゃがみ込むのに目もくれず、うどん屋はそば屋のもとに戻ってそれを投げつけてやる「いつかそれが必要のない世界が君に訪れるとしたら、それはどんなにいいだろう。一枚のバスタオルが一筋の道となり、君の足跡が歴史となる。そして地平線はやがて、この無限の荒野から風景に変貌し立ち上がるだろう。そして、そしてもし、海が見えたとき、そっと足をつけて思い出すがいい。やがてはやはり、バスタオルは必要なのだと。これはお前のはじまりであり、ゴールなのだと。そして、そしてだ。海の水を含ませたこのバスタオルを、きっとここに返しにきておくれ。それが、おれへの、寿司屋への、お前の気持ちになるだろう」
 シミーズを着た寿司屋が店の入り口に立って、その様子を見ていた。目には涙を浮かべていた。「ああ、なんて、なんて……」
 うどん屋は口の端で笑って、寿司屋に振り返った。「彼の帰りを待とう、寿司屋」
 「ああ、なんて……」寿司屋は震えた。「なんて酷い奴だ……勝手に私のバスタオルを貸すなんて!」
 


分かりやすい世界同時株安の混乱

ついったー上での「#BlackMonday」のハッシュタグ発生



24日午前3時(日本時間午後4時): ヨーロッパが起き出し、パニックが始まる。アメリカもすぐに反応した。


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24日午前7時(日本時間午後8時): 世界全体が一気に呆然とし始める。人々は貯金があっという間に失われてむせび泣く。アメリカでは取引開始と同時にダウ急落。状況はさらに悲観的に。


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24日午前12時(日本時間午前1時): #BlackMondayが世界を席巻! 破滅、憂鬱、その他もろもろ。


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 最近ちょろっと運用もしようかな、と思ってた矢先にこれだよ。でもまあ、下がりきったら株は買い頃かもね。私は一度痛い目見てるのでばくちはしませんが。
 
 今この瞬間すごい数の人間が自殺してると思うと気が沈む。




即興習作「てる美」

 脳細胞からミカンを栽培する研究に失敗した俺と、水爆の影響で肌が荒れがちなやもめ女は世界の別の場所で同時に同じことを思いついていた……「ビールの色を紫にしたら、ドイツが滅ぶ!」俺はミカンの色から、やもめ女は水爆の輝きからそれを発想したのだった。全部ビールのせいだ、ドイツのせいだ、ならば奴らの食っているジャガイモを全てサツマイモに変えてしまったならば、ユーロは紫色に泡立つ、そして地中海へ栄養満点のアルコールを流しだし、プランクトンはすべてアル中になるのだ、そしてアル中プランクトンを食った魚はアル中が凝縮し、その凝縮アル中魚は世界中に輸出され、それを食った人間はアル中になる! やもめ女が水爆をドイツで炸裂させ、ジャガイモが遺伝子を発狂させてすべてサツマイモになってから、日本でルンペンになり下がり果てた俺がその成果となった事件を目撃するまでに一ヶ月もたたなかった……「ドイツ、滅ぶ!」新聞には今もその文字がにぎわっていた。俺はその新聞を地面に敷いて冬の冷たいアスファルトが尻の体温を奪うのを防ぎながら、さるレストランの前に座っていて、閉店時間を過ぎたらゴミ箱をあさろうと張っていたんだが、テラスに座る家族連れがぶつぶつ言い出したのだ。「このお魚、なんだかお酒臭いわあ」女の子が文句を言って、フォークで刺した魚を口に運ばない。「てる美、好き嫌いをいっては駄目だよ、きっとおいしいから食べてみなさい」父親らしき男が窘めた。
 てる美は自分の名前が気に入っていなかった。というか、あるとき名前の由来を聞いて、それ以来嫌悪感を抱いていたのである。おととしの祖父の法事の際、こう言う時くらいにしか会わない伯母がこっそり言った。「あんたのお父ちゃんは酷い奴だよ」父の姉である彼女の顔は苦々しげだった。「どうしたの、おばさま? 父が何をしたのですか?」てる美はきょとんとして聞く。「あんたの名前の由来だよ。『てる美』というのは、テルミット焼夷弾から取ったんだにょ!」
 てる美はそれを聞いて愕然とした。自分の名前を大量破壊兵器から取るなんて! いったい父は何を考えてるのか!? 「おばさま、私、いますぐ改名したいです! 私に付き添って裁判所に一緒に行ってください!」てる美は言う。が、伯母は「だけどね、お父ちゃんはそれを許さないんだと思うんだよ。それに多分あいつはね、テルミット焼夷弾を持ってるんだよ。改名の申し立てなんて、そんなことしたらあたしらどうなるか……」と乗り気ではない。無責任なひとだ。人の知らなくてもよかった汚辱の因縁を暴露しておいて、後は何もしないなんて! 「おばさまには責任があります! なんとしても一緒に裁判所に来てもらいますからね!」てる美は食い下がった。が、「そう言われてもにゃー」と言われて、うすうす気づいていたが、伯母は精神がおかしいと思った。それで裁判所ではなく精神病院に連れて行った。
 「はっきり言いましょう……おばさんは、病気です」精神科医はてる美に言った。「あなたも、遺伝子が似ているので気をつけてくださいね! とくにお酒の飲み過ぎには要注意です!」
 そんなことがあったので、てる美は酒が効き過ぎの魚は食いたくなかったし、父の命令も気に食わなかった。だが、そんなことは俺はつゆ知らず、食べないなら恵んでほしいなあ、くらいに思っていたのであるが、すぐにその考えを改めた。どうやらこの酒臭い魚はやばいようだ。レストランのテラスといい、店内といい、あらゆる料理から尋常じゃない酒臭さが溢れ帰り、すでにそれを口にしてしまった客たちは重度のアル中となってゾンビのように徘徊し、幻覚の虫が体中をはびこるので全身がぼろぼろになるまでかきむしり、肉が捲れ、血が滴り、そう、ゾンビのように! うーあー言いながらさらなる酒を求めて徘徊するのだった、ゾンビのよう!
 「こんな狂った料理、やっぱりよう食べられん!」てる美は皿ごと魚を地面に叩き付けた。「てる美! なんだ、その大阪弁は!」父は怒った。「お父ちゃん、私、知っとんのよ! 私の名前、焼夷弾から取ったってこと!  それに今もそのテルミット焼夷弾持ってて、逆らったらどうなるかわからんちゅうこと! 全部、おばさまに聞いたけん!」「あいつの言うことを鵜呑みにしたのか」父はうつむいた。「お前にこんなことを言いたくなかったが……伯母さんは病気なんだ」
 俺はそういう親子の込み入った話など聞きもせず、地面に投げ捨てられた魚を、もういらないものだと判断し、むしゃむしゃ拾い食いしていた。それに気づいたてる美の母親が金切り声をあげた。「ルンペンが! ルンペンがいるわあああああ!」その声のでかさにびっくりしたのは俺の方である。母は頭と両腕を振り回しながら叫び続ける。「私、ルンペンは駄目なのおおおおおおおっ! ルンペンだけは駄目なのおおおおおおおお! うおおおおおおおおおっ!!」激しくヘッドバンキングする後ろでヘビメタが鳴り始める。どうやら店内にいたゾンビがBGMの有線ラジオを勝手にヘビメタチャンネルに変えてしまったようだ。
 「貴様あああああ!」父が俺の胸ぐらを掴んで引っ張り上げた。「お前のせいで、うちの家庭はめちゃくちゃだ!」父は往復ビンタを容赦なく俺に浴びせかける、それを止めたのはてる美だった。「お父ちゃん、そいつは関係ない! 母さんは勝手にきょどってるだけだし、それにお父ちゃん、おばさまの話が嘘だと言いたいなら、本当の由来を教えてよ!」
 ヘビメタが鳴り、母がヘッドバンキングする中、てる美は俺を掴んで立つ父親に対峙していた。その周りをうようよするゾンビ。このとき俺が考えていたのは、なぜミカンを作りたかっただけだった俺がこんな目にあってるのか? という人生に対する果てしなき疑問だった。脳細胞からミカンを作る実験が「非人道的である」とバッシングされ、研究が続けられなくなり、銀行に借りた金は返せず、研究施設も農場もすべて抵当として取り上げられてしまった! そしてドイツさえ滅べばいいと思ってた。根拠のない希望に燃えていた。若かった。全てを失ってもいいと思っていた。ドイツさえ滅べばいいと思った。その浅薄さが、逆に駆け足のような力となっていた。皮肉だった。早熟なミカンのように甘酸っぱい匂いに溺れ、そして実ったばかりの青い夏ミカンのように渋い思いもした。滅べと思った、ドイツは。ドイツさえ滅べばいい。そして気づいたら仕事も何もかも失い、浮浪者同然だ。いや、浮浪者そのものだ! 俺は、ミカンすら育むのに失敗し、そして人生そのものを失敗した! 未熟なまま走った末、熟した頃には腐敗した大地に転がっていたのだ。絶望に打ち拉がれたまま地面に新聞紙を敷いて横たわり、このまま空き缶拾いで日銭を稼ぎ、炊き出しで恵みをもらい、ゆっくりと死んでいくだけの俺だった、そう、ゆっくりと死んでいくだけだったのだが、ある日敷き布団にしている新聞紙の見出しの文字が目に入ってきて俺は全身に戦慄が走ったのだよ。「ドイツ、滅ぶ!」! 俺は目を疑った。義眼だった右目を取り出し(二年前にヤクザに殴られて右目は潰れ、それからガラス製の義眼を入れていたのだった)、俺は疑いかけた。「目さん、今妙なものを見た気がしたが、お前大丈夫か?」俺は目にそう言ったが、目は首を振った。「いや、ほんとにドイツは滅んだみたいよ。よく見てみ」目は言った。そして俺は残った左目で改めて見ると、そこには「ドイツ、滅ぶ!」の文字がたしかにあったのだった。「ごめんね、目さん。やっぱり君は正しかったよ」俺は言った。「でしょ」目は得意げだった。「疑ったりして、悪かったよ。これからもよろしくね」そういって俺は目の瞳の部分に軽くキッスをした。「やん! ばか」目は頬を赤めて(こういうとき、彼女は充血して、血管が走るのだ)、でもまんざらでもなさそう。俺は目さんを眼窩にはめこんで、改めて考えた。俺の挫折した夢を一体誰が叶えたのだろう? 新聞をよく読むと、突如水爆が炸裂、イモが遺伝子変革をおこして全てサツマイモになってしまい、ビールは紫色に、それが許せずドイツ国民は憤死。なんてことだ、俺の理想通りだ。これは一体どう言うことだ!? このことは自暴自棄になり、ただ死を待っていた俺に生きる目的を与えた。この犯人に、いや革命家に会いたい。居場所を突き止めたい。そして分かり合いたい。こいつとなら、世界をもう一度変えられる。誰もが、笑って脳細胞からミカンを作れる世界を実現できるかもしれない! そうだ、大学院まで出てルンペンをやるようなこんな世界がそもそも間違っていて狂ってるんだ、俺は世界を治療する! あの革命家とともに!
 ということを思念していたのだが、その間にも父のビンタがめった打ちに襲いかかっていて、俺の両頬はリンゴのように真っ赤に膨れ上がっていた。
 「お父ちゃん、もうやめーやー!」てる美が父にしがみつく。「こんな奴ほっとき!」
 「黙れ! このテルミドールのクーデター!」父はそう怒鳴って、それから、しまった、という顔をし、俺を放して両手で口をおおった。自由になった私は崩れ落ちて両頬を押さえながら、考えた。テルミドールのクーデターといえば、フランス革命のさなか、山岳派によってロベスピエールの一派が捕えられ、処刑や自殺に追い込まれた事件、政治闘争じゃないか。さっきからごちゃごちゃ言ってた名前の由来うんぬんって、それか? 娘にそういう事件から名前を取るなんて、こいつ頭がおかしいんじゃないか? そう思っててる美とやらを見ると、彼女は紅潮した顔に涙を浮かべ、ぶるぶると震えていた。「おのれええぇ……」てる美は腹の底から絞り出すように怨恨にまみれた声を発した。父はかぶりを振った。「何かの間違いだ! 何かの間違い!」「何が間違いなんだ! この野郎、娘の名前をなんだと思ってるんだ!」てる美はテーブルナイフを拾い、構えた。「殺してやる!」てる美はそのナイフで父親めがけて思いきり突いた。
 「やめろ!」俺はその間に飛び出していた。無関係の俺が入れば、ナイフは止まり、彼女もひとまず冷静になるかと思ったのだった。だが突然過ぎたので、ナイフは止まらず、俺の顔面を抉り抜いた。そのまま吹っ飛び、父とともにもんどりうって転がった。父は愕然としながら、俺を抱き起こした。「なんてこった!」父は言った。「てる美、お前、いくらなんでも刺すなんて……」てる美はさっきとは違う理由で震えていた。ナイフは取り落としていた。「そんな……どうして……」てる美はそのままへたりこんだ。親子とも、あまりの出来事に絶句し、動くこともできなかった。その後ろで母はヘッドバンキングしている。
 「うーん」だが、俺は唸りながら起き上がった。それに再び、親子は息が止まるほど驚いた。なにせ俺の顔は抉り抜かれ、ぽっかり穴が開いていたのだ。「だ……大丈夫なのか? 怪我が重いようだが」父が不安げに声をかける。「いや、痛みは大したことないし、平気だろう」俺はそう言って顔に手をやった。そして、そこにあるはずのものがない、圧倒的な空虚に気づいたのである。右目の眼窩が空なのだ。
 「目さん……目さん!」俺はなくなった義眼をさがして辺りを見渡した。少し離れたところに、キラリと光る彼女が転がっていた。私はそこに駆け寄った。彼女には大きなヒビが入っていて、致命傷といえた。
 「よかった……無事だった……んだね……」彼女は息も絶え絶えに言った。「馬鹿な……目さん、もしや俺をかばって!」「いいの……左目のこと、幸せにしなきゃ、ゆるさないんだからね……!」
 そういって彼女は息を引き取った。私の左目は涙をあふれさせた。
 俺はひび割れた彼女をポケットに入れると、親子に向き直った。「貴様らの愚にもつかない親子喧嘩のせいで、全く無関係の俺の義眼が死んだ! 愚かだ! 失望した! お前たちは、この狂った世界の象徴だ! このまま争って滅ぶか! 気の済むまで殺し合うか! それとも俺の手で、殺してくれるか!」父はそう怒鳴られて、さすがにしゅんとした。「悪かった、娘のしたことは謝る。義眼は弁償するし、あんたの満足するだけ慰謝料も出そう。だからここは怒りを収めてくれ」
 「二億だ!!!」
 「二億!!!?」父は呆れ返った。「馬鹿なことを言うな、今から銀行に行ってすぐ100万用意できる、それで手を打とう、な? あんたには十分な額だろう?」
 「人を外見で判断するな、この腐れ名付け親が! 腐れゴッドファーザー!!」私は怒鳴り散らした。「俺はもともと、脳細胞からミカンを栽培するための企業をやっていた実業家、研究者なのだ! そして俺は一時的にルンペンに身をやつしたが、今から巻き返しを図るところだった! その矢先にこれかよ! そうだよ。おまえらどうしてくれるんだ。俺にはパートナーが必要なんだよ。それがこの義眼だったんだよ。それを惨殺しておいて、虐殺、刺殺しておいて、可哀想な目を抉り殺しておいて、百万なんていうはした金で逃げようってのか! どこまでも浅ましい奴だ!」
 「しかし二億というのは、逆手に取った恐喝だ! 示談は裁判で決着をつけさせてもらおうか!」父は開き直り、がぜん強気になった。しかしふと街を見ると、すでにアル中と化したゾンビが跋扈し、空襲警報のサイレンまで鳴っている。空を跳ぶグラマン戦闘機からアル中魚がロケット弾のように発射され、地面に降りそそぐ。それにゾンビも、飢えた普通の市民も群がり、貪るように食いあさる始末。110番も119番も、何度かけても対応するのはゾンビ! すでに警察消防は汚染され、裁判所が機能している確立、ゼロに等しいか、ゼロと言っていい! 「わかったか、すでにこちらの陣営が(と、言っておこうか! すでにこれは既成事実なのだから!)優勢なのだ! きさまらのような、家族でレストランのテラスでお食事するようなアッパーミドルクラスの豚どもが勝利する確立、ゼロに等しい!」
 父は八方ふさがりを悟り、首をがくんと垂れた。「しかし二億など、とても払えん……」
 「月300万からでOKだ、金利は2%で。俺はこれから、ドイツを滅亡させた人間を捜さなければならん。そのための資金源となるのだ」
 そして俺はてる美の腕を引いて立ち去ろうとした。「この娘は抵当として預かっておく!」「ほげええええええ!」てる美はのたうった。「殺生な! うちがどうしてお父ちゃんの借金の抵当にならなあかん! それにこれ人身売買やで!」「黙れブタアアアアアアアアア!! そもそも貴様が殺眼犯だろうが! 責任を取って抵当になるのだ! そして二億が完済されるまで、荷物運びや炊事洗濯、掃除、買い物、ご近所への挨拶、NHKや宗教の勧誘の追っ払い、家計簿づけ、資金運用、ヤクの売買、武器取引、CIAへの情報提供など、煩雑なことは全て貴様がやるのだ!」「それっていつまでかかるん!?」「月300万だと七年くらいかな」
 てる美は血の気が引いて、引きずられたまま足の力が抜けた。このままでは、私まだ小学五年生の11歳なのに、七年も拘束されて、いちどきりの青春を雑用で浪費することになる。こんなこと、あっていいのか。いや、絶対に、あってはならない。
 殺す。機会を見て殺すしかない。……大丈夫だ、さっきだって、義眼さえなければ、奴の目玉を貫通し、脳を破壊できたんだ。チャンスはある、きっとある! 背中を向けた時! 酒に酔った時! 寝込み! 機会を待つのだ!
 そして……そうだ、それまでに、こいつの債権の相続を私のものにするのだ……!!
 どうにかして、その旨の遺書を書かせるか、いっそのこと、養子になってもいい! 父に呪われた名前をつけられたと確信した今となっては、今の家族など、未練はない! 金さえあれば、私はもう一人でも生きていける! こいつを殺し、債権二億円を奪い取って私のものにして、あの憎い父親から金をしぼり取ってやる……!!
 クックックッ……一石二鳥とはこのことだ……私の人生を金づるとしか思ってないこのルンペンを暗殺できて、呪いの名を与えた父を金銭的に抹殺する! そして、そこから私の人生ははじまる……
 二億あれば、名前など買える! 自分で好きな名前をつけて、新しい、自分の人生を生きるのだ!
 「お父ちゃん!」てる美は引きずられながら叫んだ。「もし返せなさそうなら、生命保険かけて! お父ちゃん、たっぷりお父ちゃん自身に生命保険かけて! 私を助けて!」
 涙を流してそう訴える娘に、父は首を横に振ることはできなかった(母は縦にヘッドバンキングしていたが)。「ああ、生命保険でも何でも、やってやる! お前を助けるために、なんだってして、二億は払ってやる!」
 その父の言葉を聞いて、てる美は心の中で邪悪な笑みを浮かべ、赤い舌で唇を舐めた。そうして見た目上、てる美は鳴き叫びながら俺に連れて行かれた。
 俺はさっそくコンビニのATMで、振り込まれた300万を下ろすと、羽田空港に向かった。「まずはドイツへ行こう。あそこがどうなっているのか様子を見たいし、革命家もそれほど遠くには行ってないと思う……。少なくとも噂は聞けるはずだ」それにてる美は、泣きはらした顔でこくりと頷いた。沸き立つ殺意を封じ込めながら…………
 
 
 
 


崩壊

 差し歯が抜けた。なんてことだ。
 江沢民派のテロか、それともイルミナティの陰謀のせいか、原因を捜し倦ねていたが、どうやら上海株の限界突破暴落のあおりをうけたようだ、と推論している現在。

 七月頭の暴落でもやられてた絶望おじさんは、どうやらあいかわらずだったらしい。

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 その他最近の出来事では、第15回MMD杯が始まってるんだけど全然盛り上がってないんだよな。それに忙しくて見れないんだよな。


 あとジャモさん、遅くなりましたが、これがバグお菓子づくりです。

 







天津……

ちょっとすごすぎんだけど。

日記更新

 ・詳しくは書けないが、ジャモさんが「本が大量に廃棄される」との情報をくれて、めぼしいものをもらいにいく。ラインナップの中には非常に古く、貴重そうな本もあったが、いかんせんそういう本を必要とする人があんまりいないので、すべてシュレッダーにかかる運命となる。
 ジャモさんに「君はこの本たちにとって……シンドラーなのだよ……」と言われる。
 結局、9冊のかわいそうなユダヤ人の少女を救う事に成功。

 ・グルメ漫画をいろいろ読んでみている。で、その中でも「花のズボラ飯」は、絶対に下らないだろうな、と思って読んでなかったんだけれど、食わず嫌いはいかんかなと思って読んだら、これが、よかった。感動した。文学だった。
 「花のズボラ飯」はどういう漫画かというと、夫が単身赴任で一人残された妻が、だらしなく生活しながら、あんまりおいしそうじゃない料理を作っては、豚のように貪り食うという、グルメ漫画としてみると最低のものなんだが……

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 わざとやってるかと思うほど汚い。

 しかしこれ、全2巻最終話まで読むと、コペルニクス的転回が起きる。「今までのは全て前振りだったのか……!!」「俺は悲劇を見ていたのか……!!」というね。
 とにかく、グルメ漫画史上に残る傑作なので、この文章を読んだ人間は必ず買って読むように(ステマ)。そして読み終わったと思うタイミングでぼくが批評書いてあげます。
 ここまで「食」というテーマで喜悲劇を書き切った漫画ってないよ、と俺は思う。

 ・関谷研究室OBOGの夏合宿に行ってきた。合宿といっても、釣りをして酒を飲むだけである。だが炎天下の中連日釣りをし、飲み続けるのは体に来る。おまけに、お子さんのいる方もいて、そのお子さんたちがやんちゃで、俺やヒロセ氏が餌食となり、殴る蹴る、髪の毛を掴まれるなど虐待を受ける。
 今回私はあまり釣果はなかったが、ニシキベラが初めて釣れた。ぐん、ぐんという引きが野蛮で釣りごたえがありんした。
 また、今までは私が最若年だったのでパシリポジションだったが、ようやく後輩が参加し始め、少し楽になる。しかもアメフト部なので、労働要員としては十分。
 
 夏深し 恋する乙女 酔はす燗


 最近そんなとこ




プロフィール

金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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