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ジョナサン・キャロル風岩間日記

今ぼくは、自分の息子の頭に拳銃を突きつけている。だが息子は、ぼくの方を見て笑っているんだ。どうしてこんな事態になってしまったのか、聞いてくれ……。

もう二週間近くも昔の事だ。ぼくはまだ若く、大学を卒業して市役所に勤め始めたばかりだった。小金井市はとりたてて出来事のない町で、特にぼくが所属する生涯学習課は退屈な仕事だった。小金井市は清里に山荘を持っていて、そこの使用申請書類を整理するのがぼくの係だ。その日も老人のサークルやボーイスカウトといった他愛のない団体らからの書類をまとめながら、一週間後に控えた妻の誕生日に何をプレゼントしようか考えていたところだった。そのとき「ライアン」と、ぼくを呼ぶ声がした。情報管理委員会のアラニスだった。彼はぼくと同期の入社だが、幹部候補として情報局に配属された。おそらくあと数年で課長になるだろう。「飲みなら付き合わないよ、アラニス。今日はとても疲れているんだ」ぼくは言った。「疲れる?」アラニスは鼻で笑った。ぼくは彼の方に振り向いて、言った。「責任のない仕事は気楽だとでも思うか? ぼくの机の上にある紙の量を見ろよ」「よせよ」アラニスは再び鼻で笑った。「そんな議論をしにきたんじゃないさ。仕事の話だ」アラニスは一枚の写真をぼくの机の上に放った。「ライアン、清里について一番知っているのは君だ。そう、情報局の人間よりもね」

それを聞くと、もう悪い予感しかしなかった。ろくでもない仕事に決まっているからだ。ぼくは清里山荘係としてその管理を一括して任されていた。そのなかには、情報局役員レベルの機密事項も含まれていた。だからぼくは、清里でもめ事が起こったときは常に事件を監督するために飛び回らなければならなかった。「出張の話か」ぼくはため息とともに言った。「ああ」アラニスは言った。「ただし、今回は清里じゃない。岩間へだ」「なんだって?」「写真をよく見ろ」アラニスは写真をぼくの方に少し寄せた。

写真は、おそらく大学生と思われる若者たちの集合写真だった。なんてことのない写真だったが、おかしい点があった。それぞれの人物の背後に、ぼんやりと人影のようなものが写っているのだ。心霊写真のようだった。が、我々はそれが普通の霊ではないことは一目で分かる。「スタンド使いか」私は言った。「ああ、全員がな」アラニスは応えた。

「ゲンダーキ・サムービという、アラビア系マフィアだ」彼は言った。「表向きは、ムジュビシノッサ大学の演劇サークルということになっている」
ムジュビシノッサ大学といえば、悪魔崇拝を公然と行い、終末論を掲げる確信犯的犯罪者養成組織だ。それだけ聞けば、ぼくはゲンダーキ・サムービの目的は分かった。
「もう察したみたいだな」アラニスは言った。「だが一応説明を受けろ。我々小金井市が封印した『女性』が清里から盗まれたんだ。そして、知ってのとおりもう一つの封印『男性』は岩間に安置されている」彼は話すのも忌々しいといわんばかりの顔つきで続けた。「ゲンダーキ・サムービは毎年、岩間と清里の交互に合宿に行っていた。おそらく大学本部からの指示で捜査していたのだろう。大学は創立八十年記念式典を控えている。そこで行われる黒ミサ悪魔召還の儀式に『男性』と『女性』の結合が必要なんだ……大学も期限が近づいて焦ったのだろう、ゲンダーキ・サムービに強攻策を取らせたんだ」

「で、ぼくの仕事というのは?」ぼくは聞いた。「岩間への潜入だ。ゲンダーキ・サムービから『男性』を守れ」アラニスは言った。
こうして、ぼくは岩間へ行くことになった。8月の18日だった。


電車では狙われた時に逃げられないというので、小金井市から茨城県岩間までは原付でいくことを命じられた。ぼくは青梅街道まで出て、それからひたすら東に向かって進んだ。途中にあった上州屋で、釣りに使うリールを買った。仕事の合間の趣味くらい許されてもいいはずだと思ったからだ。そんなわけで、ぼくの背負ったリュックには、着替えや洗面道具、そして市役所から与えられた『自家製ハム型爆弾』、そして釣り竿が入っていた。釣り竿はリュックから飛び出していた。走っている途中に釣り竿が傾いて、トラックを抜こうとしたときに接触してしまった。激しいクラクションを鳴らされ、ちょっと悲しい気分になった。

だが、それを上回る悲しみが待ち受けていた。浅草からさらに北東に向かおうと大きな橋を渡っている最中だった。後ろでサイレンが鳴り、振り返るとすぐ後ろの上空にF-16戦闘機が飛んでいて、私をロックオンしていた。F-16はサイドワインダーを発射した。同時にぼくは、原付から横を走っていた軽トラの荷台に飛び移った。爆風の中に原付が消えていくのが見えた。荷台のついたてで熱風を躱しながらリュックからRPG-7を取り出し、F-16に向けた。「ゲンダーキ・サムービの刺客か!」ぼくは叫んだ。するとF-16の覚醒マイク(声を覚醒させるマイク)から「葛飾警察署だ!」と響き渡った。「そこの原付、止まれ!」

F-16から降りてきた白バイ隊員によると、原付の制限速度は30kmだから、50kmで走っていると20kmオーバーだという。ぼくは制限速度50kmの道を50kmで走っていた。でもそれは違反だ。ぼくは一万円取られることになった。

それから水戸街道をひたすら北上して茨城に入った。ぼくは以前も原付で、京都まで旅行に行ったことがある。そのときの距離やひどい寒さに比べると、この旅は楽なものだった。そう思っていた。これから起こる惨劇など知らずに……。



(力尽きてきたので、以降ダイジェスト)

昼下がりに岩間の小学校廃校に到着。これが宿舎。193が「川で釣りをしよう」と言うので竿を持って行く。餌がなかったので、そこらへんの田んぼの端をほじくり返してミミズを採る。川ではおっさんが釣りをしていたので、話を聞きつつ隣でやらせてもらう。ウキ止めのゴムを忘れてきてしまったのでおじさんに恵んでもらった。ありがたい。得体の知れない魚を3匹釣る。おじさんにも何匹か恵んでもらった。おじさん曰く「食べれるけど、食べたりしないよ」な魚だが、せっかくなので調理。マイ包丁「豚刀」で腹を割いて内臓を取り、フライに処す。なんかワイルドな味。夜はレク大会、恐い話大会。今年は新作を仕入れ忘れたので、過去の名作が多い感じになった。

次の日。海へ。飲み過ぎて寝坊。酔いを醒ましてから原付で海岸まで行く。これは思ってたよりは大変だった。時間に余裕があったら寄り道したりもしたかったが、ならず。海についてからは泳ぎまくった。楽しい。その様子を見て「茨城の未確認物体だ」とか言われてたらしい。ぜひ確認してほしい。昨晩、マジックで体中に書かれた落書きが消えていってしまった。その後防波堤に行き、釣り。あまり時間がなく、ほとんど準備だけで終わってしまった。キス釣りの仕掛けで何回かキャストしてもいまいち要領がつかめず、諦めかけてこれで最後、と思ったときにフグが釣れた。ザ・外道。るる。
その後魚市場に行き、今夜のバーベキューのおかずを買う。人数に対して予算がちょっと半端。安いものを買うと量が多くなりすぎて、高いものは買えない。結局、鯵、サンマ、ホタテ、大アサリ、タラバ蟹、鮭一尾、イカなどを購入。
帰ってから調理。私は宅飲みとかだとだいたい調理場に立ちっぱなしだが、この時も豚刀は猛威を振るった。魚を捌くのは楽しい。一段落してかまどの前でビールを飲んでると、ホタテの汁が足にこぼれた。熱い。最後には自家製ハムを焼く。薫製は何度も作ったが、今回は一番出来がいい。塩抜きはしっかりやっといた方がいいな。そしてお開きになった後は岩間名物・五右衛門風呂に入ったのでした。寝る前はO竹と夢について語り合った。ロマンチックでいいと思う。

三日目。帰る日。草むしりに情熱と生き甲斐を感じる。一分で1㎡の草を抜く。バーサーカーソウル。缶コーヒーとともに体の中に流れ込んでいく愛。ちびくろさんが残してくれた花火をちょっとやる。打ち上げ花火は迫撃砲みたいで楽しい。お昼頃、原付に乗って帰路へ。

行きは長袖で来たが、帰りはうっかり半袖を来ていたので日差しがきつい。痛い。
「最終鬼畜全部声」とかを歌いながらバイパスを走っていたら、一車線しかないのに軽トラがすごいスピードでスレスレで抜いてきた。「こわいよーっ!」と叫ぶ。わりとかわいく。楽しい。
そんな感じで数時間、行きと違ってでたらめに走っていたので、水戸街道から降りた先は考えてなく、行き当たりばったりに走った。そして何かの橋をわたっていたその時、後ろからサイレン。白バイ。そこの原付止まりなさい。サッと血の気が引きました。行きでも食らったのに。ずっと注意してたのに、気を抜いたとたんこれだ。白バイ警官は何かやたら怒っていて、橋を降りたところで原付を止めた私に言った。

「君は一昨日も捕まったばかりじゃないか!!」

なんと、同じ人だった。
そうとは知らずに、行きに渡ったのと同じ橋に来ていたのだった。

「小金井ナンバーだし、見覚えのある竿だから、もしかしたらと思ったんだよ」「もう二度と会わないようにね。普通は『また会いましょう』だけど」などとハートフルな言葉をいただいた。でもいい人だった。運命を感じた。別な出会い方してたら、俺たち友達になれたかな? という死亡フラグ立てつつ、それ以降はもう恐くて30km以上出せなかった。軽トラに抜かれるより百倍恐い。でも都心って遅く走ってると逆に危ない。

その後中央区で迷い、ガソリンスタンドのおじさんに道を聞く。「釣りをするのかい?」と聞き返されてから話が弾み、ここらへんでスズキが釣れると教えてもらった。また来ようと思う。今度はすくなくとも二輪で。

(ちっともジョナサン・キャロル風にならなかったことと、重なっての違反を天に詫びます)






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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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