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抽象画の価値

 サイ・トゥオンブリーの絵「黒板」がオークションで約86億円で競り落とされた件について。
 美術に無関心な人にとっては、こんな落書きみたいな絵にこれほど高値がつくことは信じがたく、またばからしいことだと思えるようだが、まあ……値段に関しては、高名な美術家の作品は投機の対象になるのでいたずらに値が上がることがあるとは言える。だから実際の芸術的な価値と金銭的価格としての評価が釣り合ってるとは限らない(というか、そうでない場合も多い)。芸術作品の価格を決めるのは、まずはサイズ、そして作家の名前、クオリティはそれからで、さらに投機的価値が大きく関わってくる。
 それで「黒板」という作品自体はどう評価するべきかというと……これは、実物を見ないことには分からんのですな。
 みんな、絵画というものを習慣的に二次元表現だと思ってるかもしれないけれど、絵はブツなんですよ。立体物なんです。図版や画像で分かるのはその印象だけで、最も大切なものは得られない。
 それは何か。欠けてるものを述べてみよう。まず図版でほぼ必ず損なわれるのは、サイズだ。当然だがサイズには必然性があり、それは見るものの体験に深く関わってくる。「黒板」の実サイズは、書籍やウェブサイトにはとても掲載できない大きさだ。その時点で図版は参考程度の意味合いしか持たない。特にこういった抽象性の強い作品に関しては。
 もう一つ、図版でできなくて、実物を前にしてできることというのは、近寄ってみて部分を注視したり、離れてみて全体を見たりという、そういった作品との対話的な見方だ。絵というのは、実は特権的なビジョンは持ってなくて、見るものが近づいたり離れたりしながら体験を通じて総合的に判断していくものなのだ。筆遣い、息づかいまで拾える至近距離に近づけること、そしてその絵のサイズを受け止めきれる距離をとって見ることができること、それが実物でこそ可能だ。
 そして最後に、いわずもがな図版が致命的に損なうもの……マチエール。つまり、絵肌のでこぼこ感とか物質感だね。
 まとめると。「サイズ」「材」「距離と空間」それを把握するための「体験」が図版・画像では欠落する。絵画を見るということは体験なのです。だからバーネット・ニューマンとか、あんなばかでかいキャンバスに縦線引いてたんじゃない?
 ……なので、図版だけ見て、大騒ぎすることはないと思われます。値段だって適当なんだから。
 みんなもっと美術館いけ!!




 
 

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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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