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神の漫画「美味しんぼ」

ku-ri-
コミックス10巻第四話「古酒(クースー)」より。
いってしまわれた。

古酒(クースー)は、何十年も寝かせた泡盛のこと。100年以上熟成させたものもある。

「美味しんぼ」とはどういう漫画か、というと、
「非常にうまい酒や料理は人間を狂わす」ということについてひたすら描かれているものだ。
どんなに捩じれた人格の持ち主や、激怒した人なども、山岡さんの酒や料理の知識を前にすると悔い改めてしまう。(海原雄山以外は)

異常心理のオンパレードなのである。

だから、「美味しんぼ」は、一般的な批評精神で切ると、べつに面白い漫画ではない。繊細な感情や展開が食べ物で全部潰れていて、べったりした流れになっている。というよりそもそも「合理性すら越えた美味しさの力」という、反則技が主題の話なのだ。
しかしそこに料理への愛と、人への愛があり、素直になれない人たちが料理を通じて心を通わせるドラマがある。
美味がもたらす狂気と、愛と、人間のぬくもり。
その最たるものが海原雄山だろう。
彼が象徴する世界観の中に、この漫画がある。だから山岡さんの「俺たちは奴の掌の上にある」というセリフは、私にはメタっぽいように思われる。
十分に効いてる料理のテーマから、海原的な世界観が導かれて展開されているあたりが神なのだろう。
凡庸な料理漫画だと、うんちくと演出と、蛇足のストーリーが全部ばらけて見える。

海原によって読者に愛させる漫画なのだ。


また、この漫画には、レギュラー登場人物には素直でない人が多い。
「お前ら、ほんとは仲いいだろ……」
海原と山岡さん親子とか。

しかしここにも、世に氾濫するツンデレ漫画には絶対にない要素もある。
私は今、コミックスで14巻まで読んでいるが、その限りだと、
山岡さんは絶対に「デレ」を見せないのだ。

「至高のツンデレ」海原でさえ、山岡さんがいないところでは、ちょっとデレてるかな? と思えるような言動をみせる。

また、山岡さんの同僚の栗田さん(『美味しんぼ』を知らない人のためにいうと、この話は『東西新聞』の文化部記者、山岡さんと栗田さんが『究極のメニュー』作りの企画をやることになり、そのための料理研究をするもの、だが、企画は遅々として進まず、だいたい他人や取引先の世話を焼いて終わるという)も、ツンデレといえる。

kuritasan

栗田さんは、最初山岡さんのグータラぶりに呆れていたが、山岡さんの食に対する情熱や信念にやがて惹かれるようになる。
(直接的にそのような描写がされることは少ないが、上のようなかわいらしい嫉妬がときどきあることから分かる)

山岡さんも栗田さんのことは好きらしい。話がもっと進んでいったのちに、彼らは結婚するらしい。(そして信じられないことに、海原と山岡さんは和解するらしい)。
が、山岡さんは顔には絶対に出さない。

デレの描写が皆無なのに、ツンデレを描くことができるのだ。

でもまあ、常に「食わす側」ってのもあるかもねえ。

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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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