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備忘のボビーとミリオンダラーベイビー

足尾の事をきちんと書いておきたかったが、疲労し、また記憶もおぼろになりつつあるので、簡潔に書いていく。

ジャモ、なおしと三人で群馬入り。ポエム君は人生で二度来るチャンスの一度目が来たので欠席裁判。十三日夕方、間藤のベースキャンプ着。わたらせアートプロジェクトの人たちがチゲ鍋的なものを作ってくれた。おいしゅうございました。夜、一人で散歩に出かける。山の奥の方に歩くと、やがて電燈がなくなり、闇となる。川の音だけが聞こえ、人間の現れる以前から変らない景色を想像しようとした。足尾は一時期だいぶ栄えてはいたけどね。途中で引き返し、今度はベースキャンプより下に行ってみる。アスファルトの上に寝転ぶ。まだすこし温もりが残っている。自然の音と、人工物にまだほのかに残る暖かさ。閉じて廃墟となった工場のゲートが照らされて美しかった。
そして廃線を歩く。闇。やがて草生い茂り地面湿る。このまま違う世界に吸い込まれるような気がして恐怖。しかしあまり嫌な感じがしないので、いい場所なのだろう。女性が夜に一人で歩いても逆に安全なレベルなんじゃないかと思った。場所によってはハチがいるけど。
川に降りてみたら、暗くて姿は見えないが動物がきーきー鳴いている。猿かと思い、襲撃を怖れて退散。しかし後で人に聞いてみたところ、それは鹿だと言われた。まれにカモシカも出るという。
神輿につかう廃材の目星をざっとつけて、就寝。賞味期限の切れた缶ビールが飲み放題である。


十四日、十時頃まで寝坊。炒め物みたいなのを作ってくれた。おいしゅうございました。祭り会場には昼は入れないとのことで、神輿はベースキャンプ周辺で作ってしまうしかないと判断。しかしここで、当てにしていた工具が不十分である事が判明。ジャモさんはインパクトはあるから大丈夫だと言っていたが、実際は小型の電動ドライバーで、力も足りず、歯ももろい。ほんとにもうっ! しかし「物理的に不可能なこと意外は、単に気合いの問題」を信条としているので、まあいつものことだとビスを無理矢理ねじ込んで行く。構造を作り、戸板のガラスを割ってキャンバスを張る。体力を予想以上に消耗しつつも夕方頃構造はできあがる。あとはデコレーションのみ。
日が沈む頃になって、祭りが始まるというので通洞駅付近まで降りる。櫓も立派で、想像以上に賑やか。私たちはこのお祭りがどのように進行されるのかをほぼ全く知らずに来ていたので、やや無謀であるが、まあ明日なるようになるべと思ってビールを飲んでいたら、なりゆきでフェイスアートを手伝う事になったと。

DVC00001.gif


これは非常に勉強になりました。
あと屋台のお好み焼きがとてもおいしかった。おいしゅうございました。

また祭りが始まる前に、三人で廃墟に忍び込んだ。
工場跡で、大量の瓦礫が放置され、荘厳な空気。圧倒される。長い時間にしか作れない神秘的な空間だった。こういうのを見てしまうと、人間ごときに作れるものが一体なんであろうと思ってしまう。が、子供たちの笑顔を見るとそうそう捨てたものではないなと思い直す現金な奴だよどうせ。
また工場の中の壁に「けいおん!」の唯の顔がプリントされた紙が張り付けてあった。マーキングか。廃墟マニアはけっこう多いと聞く。
帰り際に、スズメバチの巣を発見してヒヤッとする。僕は昨日ミツバチに刺されたばかりだ。



十五日。早起きして近くの廃墟に忍び込む。恐らく巨大なタンクが埋められてたであろう大穴がいくつもあいてる。地面には緑青がころころ転がっていて、ああ、銅つくってたんだな、と思い出させる。ばっちいかもしれないので触らなかったが。
ベースキャンプに帰ると、母親との関係にコンプレックスがあるというお姉さんがスコーンやチョコレートソースを手作りしていた。その気合いに敬意を示す。おいしゅうございました。そして昼下がりまで神輿づくり。学校の講師をしているというお姉さんが手伝ってくれた。はかどる。しかも昼にそうめんを作ってくれた。おいしゅうございました。
神輿の正面に、ジャモさんがステンシルで「劇団無敵」と入れる。これは普通養生テープでマスキングするが、なかったのでクラフトテープを使っていた。「それでうまくできるもんだねえ」と言うと、彼は「弘法筆を選ばず……ステンシル職人………テープを選ばず!」と、ちょっと得意そうだった。また文字だけでは寂しいので、私が昨日憶えたスティッチを油絵具で描く。意味はよく分からない。

さて完成したみこしを、5キロはある山道を降りて行かねばならないのだが、現地までの担ぎ手が三人しかいない。しかしこれを運ぶ以外に選択肢はないので、しかたねえやるしかねえ、つって担ぎ上げる。
十歩ほど歩いて、すぐに、大変な過ちを犯してしまったと思った。
重すぎる。

三人というのは、二人よりはなんぼもましだが、バランスが悪い。
ただでさえ重い上、どうしても一人に重量がかかる。
数百メートルごとに休憩し、場所をローテーションしながら運んだが、普通に歩いても一時間の道である。想像してほしい。
書くと短いが、二時間以上これを担いでいた。心の中にシベリア抑留とか、マルクスの時代の労働者とかを思い浮かべ、それに比べれば天国だと思いながらやり過ごす。
しかし三分の二ほど消化した足尾駅で、わたらせアートプロジェクトの人たちが助っ人に駆けつけてくれた。あれは非常に助かりました、ありがとうございました。六人いれば、休憩なく長距離を歩く事ができる。無事到着。「ポエム君やもっちーが来れてたら、だいぶ楽だったのかな」と私が言うと、ジャモさんが「いや……二人に……迷惑を………かけずに済んだ………」と言った。まあ、この無茶っぷりは面子がそういう人たちだから実行されたという感はある。
しばし休憩し、仮装大会はじまる。ふんどしを履き、白衣を着て、化粧する。ジャモさんは体に布を巻き、顔と胴に白の絵具を塗った。どこかの部族の戦士にしか見えない。なおしは腕にiPhoneを巻き付け、頭にミニアンプを巻き付け、デバイス系仮装と言い張る。仮装大会の趣旨は、仮装状態で出場者が盆踊りを踊るというものだったのだが、まあ神輿をかついでいるので前提から破綻していたし、統一感が一切ない。神輿に据え付けられたキャンバスには子供参加型お絵描き会を戦略的に放棄し、「涼」と一文字大きく書く。
そしてしばし暴れ、お菓子を投げ、子供の思い出の中に住もうとする。
ちびっこが二人ほど、乱入してきていっしょに担いだ。そのほかにも、親に「担ぎにいっていい?」「あれの上に乗っていい?」と聞いてる子もいた。私は「いいよ! 来なよ!」と誘ったが、その瞬間子供がフリーズしてしまった。無理もない。俺も子供だったらそーなる。
あとね、胸は作りませんでした。昨日フェイスアートをしながら子供の純粋な笑顔に触れて、彼らの夢を壊してはいけないと強く思ったのでした。ふんどしだけなら祭りと連続性があるし、愛嬌でまだ許されるが、胸は変態に成り下がる。アングラではいけない。汚れた大人になるという事が何を意味するのかを子供たちに教えるのは、私である必要はないし、今である必要もない。そうして、私は珍しく己の間違いを認めた。

仮装も終わり、私はグロッキーになり、残る問題は、この神輿をどうやってベースキャンプまで持ち帰るかということなのであった。
今日はもう無理なので、会場付近に置かせてもらって一旦帰る。帰り道、一番疲労していたのは私だった。背があるせいで神輿の重さがかなりかかっていたようだった。


十六日。作ってもらったのはたしかおかゆだった。おいしゅうございました。なおし、用事により戦線離脱、帰還。ジャモさんとともに神輿のある場所まで行く。
かつぐのは不可能とし、いかに人力を使用せず位置エネルギーを高めるかを思案。ちょうど一日に数本しかないバスが出るようだったので、装飾をひっぺがしてバス停まで持って行く。
しかし、祭り会場のバラシをやっていたおっちゃんが来て、「そんなの入らんよ!」と発す。
我々は一瞬絶望する。
が、おっちゃんは続けて「車出してやるよ、乗っけてけ!」と言った。
ジャモ「あのおっさん…………モーゼだ!!」

バンの荷台に神輿や端材を積み込み、私はその上に座り込んで、発車する。「座ってるだけなのに、これだけの荷物を載せて山を登れるなんて……」と、近代文明に感動した。数日で感覚はだいぶ変っていた。

神輿の解体はベースキャンプで粛々と行われた。絵画系の人はあまり作品を壊す事はないが、舞台やこの手の物には「お別れ」がある。短い間だったけどありがとう、みこし。
バラシもしんどいし、昼だったので日差しがきつかったが、これは心を無にしていればいずれ終わる仕事なのであまり精神負担にはならない。

帰りの電車がある時間まで、バーバラさんという女装ダンサーをやってる人にスリ集団の話を聞いた。上野のホームレスの一部にはスリの専門家集団がいて、バーバラさんはそこに取材をしたことがあり、知り合いなのだという。その連中は昔のヤクザみたいに一応仁義を持っていて、盗っていい人といけない人の見分けなどもしているらしい。昔は上野でスリをしたい人はその集団に挨拶することになっていたようだが、今は勝手にやる奴が増えていて、いわく「俺たちも困ってんだ」とのこと。
そしてバーバラさんが上野で財布を落とした時、スリ集団は「そりゃ大変だ」と言って、一緒に探してくれたらしい。


そうこうしているうちに電車に乗り、尻に穴のあいたジーパンからふんどしが見えて、やだなー恥ずかしいなー、と思いながら、帰宅した。

簡潔に書こうと思ったのにわりと長くなった。まあそれだけいろいろ沢山経験させていただきました。
特にちびっこ達には多くを教わった。ありがとう足尾。


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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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