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恋のはなし

学芸大の人たちとモツ鍋を食酢。
恋バナがはじまり、「そもそもあなたにとって『付き合う』とは何か」と質問された。

定義づけまで遡行するのは、ある種のあやうさを伴っている。
それは、議論の前提として共有される情報となりうるが、同時に、豊かなニュアンスが削れ落ちた、圧縮された議論をもたらす場合もあるという事だ。

私はどちらかというと、おりにつけ定義づけまで遡行する作業にはあまりいい印象はもってない。
なぜなら、そういう作業が好きで、失敗してる人をたくさん見てきたから。

美大にありがちなのは、「個性」や「アイデンティティ」を過大評価する風習で、最近のはやりでは「コンセプト」もこれに加わる。

そうなると、多くの人が「私はこういう人間で、このような問題意識を持ち、こういう形式でこういうことを表現した」と言い始める。

そこには、ほとんどのケースで嘘が混じり、取り繕われている。
人間、それほど自分の事がよく分かるようにできていないもの。
自分では気づけないからコンプレックスなのだし。
フロイトのモデルで言うと、氷山の一角を根拠に、自分がどういう人間で何を背負っているかなんて語れるわけがないのだ。

私はコンセプチュアリズムが嫌いだけど、それは個人的な趣味だからいいとして、美術作品において言語化できる部分が多くある場合には、まあ説明の必要がある。
しかし、作者の技量に問題がある場合、作品は説明の道具、あるいはきっかけにすぎない貧しいものとなる。
それは本末転倒だ。

結果、恣意的で未熟な前提から出発し、当然結実しないという悲惨な状況になる。私はそれをハタから見てて恐怖すら覚えたので、「私にとって○○は○○である」という話形に非常に身構えてしまうようになった。そういう風に話さなければならない場合、私は嘘をつくか、大事なものをたくさん無視することになるだろうから。

また、内田樹風に言えば、「言葉には遂行性がある」で、つまり「○○は○○である」と言明してしまうと、無意識にそれが実現するよう働いてしまい、呪いのように行動を縛る。
人間は、本来もっと自由に動ける。

だから、人間は基本的にはロジックに頼らずとも、経験から見いだした物を参照しつつ自由に動ける思考を備えている。ロジックを用いるのは、精度か説明が必要な場合だと思う。

だいたい恋愛というのは人間と人間、感情と感情のぶつかり合いなので、ロジカルな事より理不尽な事の方が圧倒的に多い。

私もべつに恋愛経験豊富なわけではないが、冒頭の「『付き合う』とは何か」という質問には、次のように答えた。(文章にしてるので、加筆するけど)

上のような考えがあるので、定義づけはできない。
なので経験から、大事だと思う事を述べる。
一言で言うと、「忍耐」(しかし今振り返ると、正確な言葉ではなかった)
知り合いや友達程度なら、心理的な距離感は自由に取れる。
しかし、付き合うと距離はきわめて近い状態で固定される。
そのとき、人間と人間だから、性格も趣味も育った環境も思想も違う二つの個体だから、軋轢はかならず生まれてくる。
人間は、己の間違いや理不尽さにはなかなか気づかないが、他人の間違いや理不尽さには強烈な嫌悪を抱く。

愛を確かめあう場面より、そういった問題が噴出した場面での判断が、圧倒的に重要となる。

愛するなら、その人の人間性を受け入れなければならない。
自分と考え方も思想も違い、時に理解し難い言動に出る事があってすら、決して怒らず、時にはこちらから折れる。
自分の感覚が100%正しいという保証もどこにもないのだし、異物として、多くの矛盾を孕んだまま、ほかの誰にも許さない距離まで近くにあることを許し、受け入れる。
自分より優先できる他者とすること、それが愛なのではないだろうか(力説)。

だから、一言で言うと、「忍耐」は「愛」に置き換えられる。でもそれではあんまりなので、「他者性」としておこうか。
共感できないところも含めて愛せるって、大切よ。というお話。


私が恋バナすると、こういう風になるんだよ。どうだ、つまらないだろう。

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Re: No title

お、ありがとう。しかしハンドルが分かりづらいです。

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Re: No title

ありがとう、ふふっ

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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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