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人間の生活、絵具の生活

ジャーマンポテトを作ろう。
そう思った。

二枚あるフライパンのうち大きい方はすでにテフロンがはげてお亡くなりになっており、それでも自分をだましだましネクロフィリア的に活用していたが、どうにもこれは死んでいると診断せざるを得なくなり、買い替えを決める。六年間お疲れさまでした。
無生物の魂を弔う。


イエローオーカーと同じ土色顔料で、伝統的に多用されたものがあった。緑土(テールベルト)である。
人肌などを書く場合、下地にまずうっすらと塗られることが多い。これは肌の下には静脈の暗い緑があり、それが実際の肌の色の深みを作っているのと同じである。
テンペラでは明るい緑となるが、油絵具としてはどうにも効きが弱く、また耐久性に乏しいという欠点を持っていた。しかし緑色顔料の選択肢があまりなかった時代には、主要な緑として活躍することもしばしばあった。地味で目立たない子ではあるけれど、クラスの人数が少なければ比較的に存在感はあるのだった。
しかし産業革命期に、派手なビリジャンやカドミウムグリーンが転校してくると、完全にアウトオブ眼中となってしまった。今では元の顔料にさらに着色し、色の効きを補強している製品がほとんどのようである(がんばっておしゃれしてみる)が、大多数の人に積極的に選択される絵具ではないのが現状である。白亜ちゃんのような芯の強さすら持ち合わせてないので「どうせ私は……」と卑屈になることも。

しかし寒色下地から暖色の上層という組み合わせでは決して魅力がないわけではなく、うまく使えば美しい発色を見せる。前述の肌でいうと、イエローオーカー(優等生)とバーミリオン(スケ番)がよく使われる。オーカーとバーミリオンは意外に中がいい。最近はバーミリオンも製精度が上がり、事故のもとになる遊離硫黄が減っているので、かつては犬猿の仲だったシルバーホワイト(お嬢)ともわりとうまくやれている。そういう華やかなメンバーに囲まれているときは、テールベルトもちょっと戸惑いながらも嬉しそうである。

それを遠くから見ているウルトラマリン。
天然ウルトラマリン「なによあいつら、私をさしおいて……! 最近ちょっと主役に使われるからっていい気になって! かつては画家のパトロンは、絵に使う金箔の量といっしょに、私を使う量も指定したのよ!」
合成ウルトラマリン「やめてよお姉様! そんな昔の栄光をいつまでも引きずるのは……」
天然「あなたにはプライドがないのよ! 最安値なんて恥知らずよ! 多くの人に使われるのが、まんざらじゃないんでしょ!」
合成「だからって、小指より小さいチューブなのに何万円もするなんて間違ってるわ! そんな事を続けてたら『値段の割に変らなかったなあ……』っていう人がふえちゃうよ」
天然「わーん」


進歩は是なりや……

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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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