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アメリカン・ドリーム

アメリカ海軍に入隊する夢を見た。

最初は単なる引っ越しだった。引っ越し先は非常につましいというかボロい寮のようなもので、共用のキッチンや浴場があり、住人は仲良く暮らしていた。どうやらみな美術系の人らしい。

私は自分に割り当てられた部屋に入った。荷物はまだ届いておらず、がらんとしている。窓の外は新宿の高層ビル群が見えた。夜で見通しは悪いが、天気があまりよくないのが分かる。

出入り口のドアの横にトイレがあった。見たこともないような形状でかなり汚く、前に住んでいた人が使いっぱなしにしていたようだった。近いうち奇麗に掃除しなければ、と思った。また、その手前にある手洗いは普通だが、手洗いの下の観音開きの棚を空けるとひんやりと冷気が。どうやらここが冷蔵庫のようである。なんか不衛生な気がするしトイレの横だし、備え付けのありがたみが全くない。

そうこうしているうちに、外で落雷があった。窓が光り、雷鳴が轟く。携帯電話が落雷速報を鳴らす。私が部屋の外に出てみると、住人たちは雷はまるで気にせず、夕食の支度をしていた。このとき、はじめて彼らとまともに対面した。
みな気さくないい奴っぽかったが、私は人の名前を覚えるのが苦手なので、「メガネ」「髪を分けてるメガネ」「ハゲのメガネ」などといった覚え方をしていた。メガネ率が高かった気がする。そのうち「食材を買いに行こう」という話になったので、同行した。

しかしスーパーに着く頃には、その集団はアメリカ海軍に変身していた。髪を分けてるメガネが軍曹のようになり「これから株の取引を行う!」と唐突に指令する。合図とともに兵たちは一斉に株を売り始める。システムとしては以下のようなことだ。スーパーの陳列棚には食品やスポーツ用品など、さまざまな商品が置かれている。その棚の裏には、その商品の製造元の会社の係員が控えている(見ることはできない)。その係員と商品を通じて意思疎通し、株を売るのだ。たとえば、ある兵は子供用のプラスチック製バットに「1万5千株買いませんか?」と言うと、プラスチック製バットから「いいですね、買います」と返ってくるのである。

軍曹は私に「売る量は五千、一万、二万のまとめが一般的だ。たくさん売れるほうがいいが、相手を見て量を見極めろ。時間との戦いだから駆け引きはするな、なるべく一撃で落とせ。ほかのことはやりながら覚えるんだ」と言うと、自身も取引に向かった。しかし、私には何がどうなってるのかもよく分からないのだった。一帯はまるで魚市場の競りのように急速に取引が行われている。悠長になってはおれんと意を決し、落花生や米菓子などの食品から当たってみた。うまく行かないこともあったが、こちらの持ち掛け通りに売れることもあり、そういうときはとても嬉しかった。しかし株に興味のない会社もあるらしく、そういうところは冷たい対応を取るマニュアルらしかった。チョコボールに「株五千ほどいかがですか?」と話しかけると「うるせえ、死ね」と返ってきたのが印象的だった。

やがてほぼ全ての商品との取引が終わり、一同は引き上げ始めた。私は少し残って粘ったが、もうどこも取引できる所は残ってなさそうだった。いい加減帰ろうかと思っていたそのとき、地面に砂粒ほどの小さな宝石がいくつか転がっていることに気がつき、それを拾って帰った。後で分かったが、宝石は株取引がうまく行けば行くほど発生するものらしい。海軍は宝石を集め、鍋で煮ていた。何をしたいのかはよく分からない。鍋の近くには、他の兵がもってきたのであろう宝石が多くあり、その中には小石ほどの大きさのものもあった。私はそれを見て、もっと大きなものが欲しいと思った。

おりしも、つい先日、中国軍とNATO軍が海戦を行い、中国の戦艦が数隻沈んだと聞いた(今時戦艦とはこれいかに、と夢ながらに思った)。私は、戦争が大きな宝石を生むことを知っていて、沈没した戦艦に眠る宝石を取りにいくため、ひとり海を泳いでいった。海軍だから泳ぎは得意なのである。

やがて海戦があった海域に到達したが、深さはせいぜい2mほどで、戦艦はなかった。しかし眼を開いたまま潜ると、砂地のなかにいくつか石が見える。それを取って見れば、自然に磨かれた奇麗な宝石である。霜降り牛肉のように赤と白の交雑があったので、ルビーと不純物かと思われた。またそれは見る角度によって柄が変わり、滲むような光具合がとても美しい。もう一つ石を拾ったが、こちらはよく覚えていない。二つの石を紙袋に入れ、両足ではさんで持ち、手だけを使って泳いで戻ろうとした。

このとき大変なあやまちに気づいた。行きはよかったが、手しか使えない帰りはすごく大変なのだ。私は世界のはじっこにいた。それは海なのだが、プールの隅のように、もう後と左には行けない場所だった。その場所には何度か来たことがある気がするし、帰るのもたしか大変だった。泳いでいるうちに左岸に町が見え、看板などにハングルが書いてあるので、今は韓国の近くだなと分かり、もう面倒臭いので陸に上がった。いつのまにか全裸だった。でも不思議と恥ずかしくなかった。町並みにはヤシの木が植えてあり、どこか南国風で、あまり韓国らしい風ではなかったが。

歩くうち、向こうから知った顔がやってきた。美術予備校で同期だった連中だった。あまりの懐かしさに驚く。なぜ裸なんだ、と突っ込まれる。

そのとき唐突に、爆音とともに煙がたち、マスクにメガネの男が現れた。同期の連中は「寮のメガネ君だ」と言うが、違った。私は「違うよ。あれはクロノ・トリガーの制作スタッフの偉い人だよ」と言った。同期の人は「そんなのどうして分かるんだ」と聞いてきた。「キャラクターが見れるエンディングがあるだろう。真っ先にラスボスを倒すと見れるんだ」私は言ったが、同期の人はぽかんとしている。どうやらマルチエンディングという概念が理解できていないらしい。私は必死に「クロノ・トリガーは最初から主人公が最強の設定で始められるし、その場合シナリオの進み具合に関係なくいつでもラスボスに挑戦できるんだよ、そしてシナリオのどのタイミングでエンディングを向かえるかによって、その内容も変わってくるんだ」と説明したが、ついに分かってもらえなかった。結局「なんでそんなことも分からないんだ!」とキレてしまい、気まずい別れをした。

気がつくと、平塚を歩いていた。駅の西側の、線路をくぐる道路の近くである。ようやく日本に帰ってきた。
さっきの予備校の同期とは異なる二人の人間がどうやら同行していて、彼らは私以上に疲れていた。彼らは私の宝石を欲しがっていた。「あなただけ宝石をもっているのはずるい」と彼らは言った。
私は「お前たちは幸せを探すのが下手だ。もっと生活に注意深くなれ。たとえば、あそこにある自転車を盗んでみろ。ずいぶん楽になるはずだ」と言った。彼らは言われた通りに自転車を盗み、楽しそうに走っていった。すると背後から外人の男女が現れ、「Hey! What do you do!?」と言って怒りはじめた。どうやら自転車の持ち主らしい。私は平静をよそおい「ネヴァーマインド」とか「ノープロブレム」とか適当な英語でごまかしつつ、自転車を追った。坂道を下ったあたりで自転車には追いついたが、外人の女の方が、手に持った飲み物をこぼしてしまったらしく狼狽していた。見ると、女の手には陶器のコップに、なんだかアクの浮いたよく分からない温かい飲み物が入っていた。それは何だ、ホワットイズディス、と私は聞いた。彼女は「サッヴァーユ! サッヴァーユ!」と、必死に伝えようとしている。しばらくして、「もしかして『そば湯』か?」と思い至った。私はすぐ側にあったタバコ屋に行き、オヤジさんに「そば湯をください」と言った。

そば湯が出来上がるまで、中に上がって休ませてもらった。海の家のようである。畳の上に無造作にサーフボードが転がっており、外人の男の方がおもむろに乗ってみせた。彼はバランスを取りながら腰を低く落とし、手をくるくる回して、何かをイメージしているようだった。そして「こう、波が来るとこうしてさばいて……いい感じに乗れてきたら……なんかいいよねそういうのって……」と言った。
「日本語話せるのかよ!」私は言った。

そうしていると、寮の住人たちがぞろぞろやって来て、私たちに気がつくと気さくに会釈した。外人カップルも会釈した。どうやら皆長い付き合いの友人らしい。メガネ君が「もう十年の付き合いだ」髪分けメガネ君が「俺は八年だ」ハゲメガネ君が「もう七年だ」、といったように、皆どれほどの付き合いかを言っていった。私が「そうか、俺はまだ皆に出会って間がない。とてもかなわないな」と言うと、「これから、一緒に長く続く付き合いをしていけばいいのさ」と言ってもらえて、ちょっとうれしかった。


そこで目が覚めた。


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金城孝祐

Author:金城孝祐
劇団無敵の作・演出家。油絵も描いてる。

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